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フェローのご紹介(オペレーティングシステム/仮想化分野)

フェルナンド・バスケス

いまほどLinuxの商用化が進んでいなかった時代からエンタープライズでの利用に欠かせないさまざまな専用ツールの構築に参画し、「kdump」の開発に成功。商用としてのLinux利用の普及・拡大に大きく貢献しました。現在はNTTの次世代型パブリック・クラウド・サービスを中心に、Linuxカーネルのコントリビューター(開発貢献者)、専門誌での記事執筆、カンファレンスや学会での論文発表、オープンソース関連のコンソーシアムの委員、さらにはスペイン政府の支援サポートなど、NTT DATAの枠に収まらない活動をおこなっています。

これまでと現在の私の取り組み

技術者向けの研修制度に興味を持ち、スペインから日本へ

フェルナンド・バスケス

学生時代はスペインで電子工学の博士課程を専攻したのち、研究員および非常勤講師としてスペインの大学に就職しました。その後、EU政府と日本の経済産業省の協同による研修制度「ヴルカヌス・プログラム(vulcanus program)」の存在を知り、興味を引かれて応募しました。

この制度は、技術者の交換留学を目的に語学研修と企業研修を兼ねた1年間のプログラムで、EUでは毎年5,000~10,000人の応募があります。私が参加した年は最終的に15人が選出され、そのうちの1人として2003年に来日しました。
約4カ月の日本語研修を経て企業研修がスタートしますが、OSSのビジネスに携わることができるという理由でNTTデータを希望し、研修生として8カ月間Linuxの開発に従事しました。そして、この研修期間での実績が評価され、2004年10月に正式にNTTデータ先端技術へと入社しました。

Linuxの標準機能に採用!「kdump」の開発でLinuxの商用利用を促進

フェルナンド・バスケス

入社当時、Linuxは商用としていまほど普及していませんでした。その理由の1つは、まともな解析ツールがなかったから。システムトラブルが発生したときに、なぜそうなったのかを知るすべがなかったのです。そこで、まずは社内に「mkdump」というプロジェクトを立ち上げ、コミッターとして故障解析ツールやテストツール開発などを行いました。すると、少し遅れてIBMは、mkdumpとほぼ同じ方式を採用した「kdump」をリリースし、オープンソース・コミュニティー内で大きく注目を集めたことから、まだ安定していない状態ながら本家のLinuxカーネルに採用が決定しました。
これを受け、mkdumpのより優れたところをkdumpに移植し、コミュニティーの一員としてkdumpの改善・強化をしていく流れになりました。開発が進むにつれ、ハードウエアでのテスト環境を強化する必要が出てきたことから、IBMやGoogleといったOSS分野の主要企業が立ち上げた組織「OSDL(Open Source Development Labs:現Linux Foundation)」内に、「kdumpテストプロジェクト」を発足しました。そして、プロジェクトリーダーとしてOSDLに交渉し無償でハードウエアを提供してもらいつつ、テストエンジニアを雇うなど開発の本格化を図りながら、1年かけてkdumpのテストを繰り返しました。
当時のメンバーは、情熱を持って開発に取り組んでいました。会社のためというよりはOSSのため、大げさに言えば社会に貢献したいという気持ちです。その結果、取り組み開始から約3年が過ぎた2007年に、kdumpの商用利用化を実現。私たちがLinuxコミュニティーと一緒に作ったこの機能は高い評価を受け、Linuxに採用されました。Linuxの商用ディストリビューションとして取り込まれたことで、Linuxの商用利用促進に貢献することができたと感じています。

優れた人脈の構築で、ビジネスの幅を広げる

フェルナンド・バスケス

kdumpテストプロジェクトで特に苦労したのは、テスト環境の整備です。テスト用のハードウエアとデータセンターを自前で用意するのは非現実的なので、マネージャーや主要大手ハードウエアベンダーの幹部にこの取り組みのメリットや将来性を必死にプレゼンし、それらの提供に働きかけました。

また、この取り組みから得たものとして大きかったのは「社外人脈」です。ともにKdumpの開発を進めていた仲間たちも、今ではそれぞれ大手IT企業の幹部陣として名を連ねていますが、現在も対等な立場でお互いに協力し合っています。ビジネスの相談なども直接やりとりできるので、本業で調整が必要になった時や課題が発生した時も、トップダウンでよりスムーズに解決できることがあります。

NTT DATAの枠に収まらない、多方面でのめざましい活躍

フェルナンド・バスケス

現在はNTT OSSセンタで、テクニカルディレクターとしてLinuxやOSSのコンサルティングおよびサポート業務に携わっています。最近では、通信事業者、クラウド事業者への今後の 適用が期待されるSDN/NFV(※)技術の標準化などに取り組んでいます。こうした新機軸のビジネス創出は、他企業との連携も重要になりますが、kdumpテストプロジェクトで培った人脈がいまも役になっていると思います。

そのほか、対外活動としてLinuxカーネルやKVM(※)のコントリビューター、専門誌での記事執筆や各種カンファレンスへの登壇、学会での論文発表などもおこなっています。また、クラウドの分野で最も強い企業が集結したマーケティング組織「OVA(Open Virtualization Alliance)」にも、ボードメンバーの一員として参加しているほか、スペインの学生向けに新たな奨学金制度をつくるといったスペイン政府の支援などもしており、ビジネス以外のことにも積極的に取り組んでいます。

  • (※)SDN(Software-Defined Networking):ネットワーク構成をソフトウエアで動的に設定・変更できるしくみ
  • NFV(Network Functions Virtualization):仮想化技術を使い、ネットワーク機能をサーバーのOS上で実行する方式
  • KVM(Kernel-based Virtual Machine):Linux上で仮想化環境を利用するためのソフトウエア

今後取り組んでみたいこと

フェルナンド・バスケス

これまで、好奇心のままにさまざまなことに取り組んできましたが、すばらしい人脈を持てたり活躍の場が増えたりと、決して悪くはなかったと思っています。だからこそ、これからも変わらず自分の好奇心に振り回されながら、業務に閉じることなく幅広い活動をしていきたいです。とはいえ、やはりLinuxやOSSは愛着ある特別な存在なので、何らかのかたちでそこに関わりながらビジネスの幅を広げていけたらと思います。やりたいことを次々に切り替えると一つひとつが浅くなってしまうので、何らかの成果を出したうえで次のステップへ進むというのが理想です。

活動履歴(著書、講演)

論文発表

  • Evaluating Linux Kernel Crash Dumping Mechanisms(Ottawa Linux Symposium 2006)
  • Generating a White List for Hardware which Works with Kexec/Kdump(LinuxConf Europe 2007)

講演、基調講演、主催

  • Kernel Summit(※)
  • Linux Storage, Filesystem and Memory Management Summit(※)
  • LinuxCon North America/Europe/Japan
  • KVM Forum
  • Linux Plumbers Conference
  • (※)Linus Torvaldsをはじめ、Linuxカーネルの主要開発者が一堂に会して開発方針とプロジェクトの運営について議論する、招待制のサミット

委員

  • Open Virtualization Alliance
  • CentOS NFV SIG
  • LinuxCon Japan表彰

表彰

  • 2009年度 NTTデータ SE大賞プロフェッショナルCDP部門スーパープログラマー賞優秀賞
  • 2009年度 日本OSS貢献者賞
  • 2010年度 North East Asia Open Source Software Promotion Forum “CJK OSS Award”