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第1回 社会とビジネスを変えるAI

1. AIによる社会の変容

内閣府は2017年に発表した第5期科学技術基本計画の中で、Society 5.0の実現を重点項目に挙げています。Society 5.0とは、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く新たな経済社会であり、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させ、経済的発展と社会的課題の解決を両立し、地域、年齢、性別、言語などによる格差なく、多様なニーズ、潜在的なニーズにきめ細かに対応したモノやサービスを提供することで経済的発展と社会的課題の解決を両立し、人々が快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる人間中心の社会とされています。

上記の説明でサイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させた社会とはいったいどんな社会なのでしょうか?具体的な例として、AIが予測した未来に基づいて交通やエネルギーなどの社会インフラを最適に制御するスマートシティや、住民が自宅や養護施設などにいながら、専門医による住民それぞれに合わせた医療サービスを受けることができる地域ケアなどがあげられています。

これらのスマートシティや地域ケアの仕組みは下の図の様なフィジカル空間とサイバー空間での仕組みの連動により実現しています。たとえばスマートシティでは、フィジカル空間である道路上の自動車の動きを交通カメラや車載GPSにより検知します(センシング)。検知したデータはサイバー空間上のAIにより処理され近未来の交通渋滞を予測します(分析)。AIはさらに渋滞を防ぐための最適なインフラの制御プランを立案し、フィジカル空間にある信号機などの交通インフラをコントロールします(制御)。このようなフィジカル空間とサイバー空間でのAI、IoTによる情報のやりとりがSociety 5.0の実現を可能とするのです。

2. AIによるビジネスのパラダイムシフト

「AIによって変わるのは社会だけではありません。ビジネスも同様に劇的な変化を遂げようとしています。ビジネスは歴史的に労働集約型から資本集約型、そして知識集約型と推移してきました。労働集約型とは、接客業のように、質の高い労働力を多数集めることができる企業がビジネスの競争力を発揮できる産業のことです。資本集約型は同様に、製造業のように大規模な資金を調達することができる企業が競争力を発揮できる産業、知識集約型は医薬品開発や情報処理など、高度な専門知識を持つ研究者や技術者を集めることが競争力につながる産業です。

社会・産業の変遷とキーテクノロジー

社会・産業の変遷とキーテクノロジー

では知識集約型の次、ポスト知識集約型はなにが競争力の根源になるのでしょうか?知識に代わる新たな競争力の根源は「スピード」でしょう。すべてのものがネットに繋がり、多様な知識に自由にアクセスが可能で、蓄積された膨大な情報から新たな知識を見出すことができる時代では、知識自体の価値が薄れてしまいます。この社会現象は「知識の民主化」とよばれるものです。もはやビジネスの成否を握るのは、希少なリソースではなくスピードとなります。とにかく先んじた者が熾烈な競争に勝つということです。そしてそのスピードを実現するのがAIです。

AIは、人間しかできなかった知的作業を24時間265日休みなく、超高速に行うことができます。AIは自由にコピーをつくることができるので、瞬時にビジネスを全国、全世界に展開することができます。UberやAIrBnBといったユニコーン企業(評価額10億ドル以上のベンチャー企業)と呼ばれるビッグベンチャーは、AIのこの特性を生かして、自らのビジネスを超スピードで世界規模に成長させました。

次回は、実際にAIで何ができるか、現在どんなAIがトレンドとなっているのかといったことについて紹介していきます。

参考情報

「決定版AI 人工知能」(東洋経済新報社)
  樋口晋也・城塚音也

Writer Profile

Blue3事業部
戦略推進担当 エバンジェリスト
城塚 音也