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第2回「フラッシュ・メモリーとは何か」


今回はフラッシュ・メモリーとはそもそも何なのか、またSSD(Solid State Drive)とHDD(Hard Disk Drive)の違いについて解説していきます。

フラッシュ・メモリーの実用化例

まず本題に入る前に、前回からの関連でフラッシュ・メモリー実用化の例についてご紹介します。近年、企業向けストレージからコンシューマー向けPCに至るまで注目されているフラッシュ・メモリーですが、以前から軍事技術や宇宙開発に使われて進歩してきたという側面があります。具体的な例としては、最近話題にもなった人工衛星の観測データ保管用データレコーダー(既存DRAM保管)をフラッシュ・メモリーで開発しています。詳しくは以下のサイトをご覧ください。

JAXA宇宙航空研究開発機構ホームページ

フラッシュ・メモリーの歴史とチップの種類

現在『フラッシュ・メモリー』といわれているものは、NAND型フラッシュ・メモリーのことを指します。不揮発性記憶素子の半導体メモリーで、1987年に東芝で開発されました。プログラムの収容を主目的としたNOR型フラッシュ・メモリーと比べると書き込み・消去が高速で、回路規模が小さく、安価に大容量化が可能な仕様になっています。

フラッシュ・メモリーのタイプには大きく分けてSLC(Single-Level-Cell)とMLC(Multi-Level-Cell)の2種類があります。フラッシュ・メモリーは『セル』(フラッシュ・メモリーを記録する最小単位)に電子をためることで情報を記憶します。SLCは1ビットの情報を1つのセルに記録するため、スペース効率は良くありませんが、セルが劣化しても判別がしやすいです。よってMLCと比べると高速で、寿命の長いチップです。MLCは、パソコンなどにも広く使われるコスト重視のチップです。2ビット以上の情報を1つのセルに記録する事が可能なため、安価で大容量化を実現していますが、劣化するとレベルを判別しにくくなり、SLCと比べて品質は低く、寿命も短いチップです。

SLCとMLCの違い

MLCから派生したチップとして登場したのがeMLC(enterprise MLC)です。MLCの回路に工夫を加えて、MLCよりも品質と性能を改良しつつ、SLCより相対的に安価になります。コスト・パフォーマンスのバランスを重視したチップで、企業向けストレージ装置に多く採用されるようになってきました。また最近はeMLCよりもコストを抑えたcMLC(consumer MLC)というものもあり、cMLCを企業向けストレージに使用するメーカーもあります(ただし品質はeMLCの方が相対的に優れています)。

近年SLCを使った製品は大幅に減っており、MLCベースのeMLCやcMLCを使った製品が増加しています。
ちなみに、後の回でご紹介予定のBlue3がお薦めするIBM FlashSystem 840ではeMLCが採用されています。

一般的なチップの耐久性

寿命への対応方法については、各社で若干の差はあるものの、ウェア・レべリング(*1)などの技術を用いて寿命を延ばす工夫がされています。eMLC(書き込み数30,000回が制限)であれば一般的なシステム使用期間(約10年)までは寿命による交換が起きないような設計をしています。

(*1)ウェア・レべリング:使用率の高いセルのデータを、使用率の低いセルに移動し、使用率を均一化させ、書き込み寿命を延長する技術。

SSDとHDDの違い

次にSSDについて説明します。現在でいうSSDとはFlash SSDのことを指し、フラッシュ・メモリー・チップを集積して構成されたドライブです。
SSDの見た目はHDDと同じ形をしていますが、中の構造が異なります。円盤状のハードディスクと異なり、マザーボードに複数枚のチップを組み込んだような形状をしています。

HDDとSSDの形状と内部構造

なぜHDDと同じ外形をしているかというと、HDDと同じSASなどのインターフェースを使っており、HDDにエミュレートして使用しているからです。そのためにフラッシュ・メモリーが本来持っている高性能を一部犠牲にしている設計になっています。一部のメーカーではSSDを使わずに独自の設計でフラッシュ・メモリー・モジュールを開発して更なる性能向上に取り組んでいます。このことについては後の回で詳しく触れる予定です。

SSDのメリットとしては、HDDのようなシーク動作にかかる時間が発生しないため、ランダムな読み込みが特に高速になります。また、モーターやアームなどの駆動部品がないため、HDDよりも低消費電力で、振動、駆動がないので衝撃に強く、騒音がありません。デメリットとしては、HDDと比べると容量が少ない、価格が高い、書き換え回数に寿命が存在する、などがあげられます。ただ、容量についても徐々に大容量のものが発表されてきており、価格についても第1回で述べたように低価格化が進んでいます。

ポイント ● 当初フラッシュ・メモリーにはSLCとMLCの2種類があった。 ● SLCよりコスト・パフォーマンスの優れたeMLC製品が増えた。 ● SSDはHDDと比べて、高速、低消費電力、軽量、低故障率。 ● 価格面、容量面については、まだHDDに分がある。