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ビッグデータ活用から価値を生む仕組みについて

奥田宏一郎

奥田 宏一郎


ビッグデータがバズワードとなって久しい昨今、ネットやメディアを通じて世に出回る情報は質、量ともに充実してきている。ここへきて、当社からこのようなコラム形式で読者の皆さまへ情報をお届けすることになったが、初回で書きたいこととして、私個人に何度も寄せられたご質問についてお答えする形で筆をとってみようと考えた。見識ある皆さまにとっては特に目新しいこともない話かもしれないが、まずは斬新奇抜なことをというよりも、誰しもが納得していただける内容とすることを旨とする点、ご了承をいただきたい。

結論から言えば、ビッグデータ活用における最大のメリットは、機会損失の最小化である。それが強いては企業活動の合理化につながり、利益に結びつく。決してビッグデータ活用によって画期的なイノベーションが生まれ、無から莫大な利益が上がるというわけではない。ただ、そのようなイノベーションを生む過程に、間接的な寄与をすることは多々見受けられる。では、ビッグデータが価値を生むその仕組みについてご説明させて頂きたい。

ビッグデータの活用の本質について

ビッグデータ活用の本質な面とは下記の3点に集約できる。

  1. 可視化
  2. 予測
  3. 最適化

現在のビッグデータ活用ソリューションは、いずれも上記3点のいずれかに当てはまる。

まず「可視化」について

「可視化」とは、「あなたが欲しい情報をあなたが理解出来る形で提示すること」である。あなたの仕事を取り巻くデータは膨大な量になると思われる。例えば、町の魚屋さんにしても実はビッグデータビジネスである。

魚を仕入れる際の「市場価格」、それも取引業者に応じてプレミアムが活用できるかどうかだけで、簡単に情報量は指数的に膨大化する。それを魚屋さんの場合は、仕入れを行う店主や仕入れ担当者の知見と経験に頼って日々の仕入れを行っている。その季節の魚の情報だけでも膨大な情報量でもあるし、その魚の産地や生産者も当然関連データである。そして何より、購入してくれるお客さまの嗜好というデータも必要とされる。これは過去の購買履歴や店頭でのコミュニケーション記録(記憶)が主要データとなる。魚屋の経営だけでも、私のような素人がパッと思いつくだけでこれだけの情報量となる。まさに “Big Data” である。

では、明日からあなたがこの魚屋の経営を任されたとして、すぐにすべての知見を吸収し、業務へ活用することができるだろうか。できる人は少ないだろう。そこでデータの「可視化」が必要となる。膨大なデータの中から、「今」必要かつ重要となるデータを理解できる形でアウトプットしてくれれば、あなたでも(私でも)ある程度は経営を任されても結果を出すことはできるのではないだろうか。

あなたが明朝、市場で仕入れるべき魚とその数量、魚を最も安くかつ安全に仕入れられる仕入先、さらに、それを購入してくれそうなお客さまの候補が見えていれば、なお理想的である。逆を言えば、これだけの情報があればよい。これを実現することがビッグデータ活用における「可視化」である。いずれの企業であれ、店舗であれ、団体であれ、この可視化を必要とするデータはすでに組織の中に存在している。データが分散して存在していたり、個人の知見に依存していたりするケースも多い。過去蓄えてきたデータから一定の法則があることを感じていながらも理解していない、などのケースはよくあるのではないだろうか。昨今ではこの「可視化」を容易とするツールが充実してきている。そして活用事例も数多く出回るようになってきた。

また、データマイニングを活用し、「見えない実態や見たことのない角度」を見ることも、ビジネスのうえでは今後より重要となるだろう。データの表層面だけではなく、深層を可視化するというのもビッグデータ活用の成否を分けるポイントである。表面上の形だけではなく、その構成要素を分解したりなど。データマイニングによってできることは、相関や因果などの隠れた法則を見つけ出すことである。この法則をどれだけビジネスに応用展開できるかについて、世界中のあらゆる企業がしのぎを削り合っている。

もう一つはプロファイリング。人を対象としたプロファイリングをカスタマーインサイト構築、商材を対象としたプロファイルはポテンシャル分析などがある。例えば、お客さまの購入履歴をもとに、嗜好性やライフスタイルを探るなどと言った可視化はこの領域にあたる。こちらは、しのぎを削るというよりも、CRM的観点からPDCAを回しつつ、じっくりブラッシュアップを図っていくスタンスを取る企業が多い。いずれの場合も、目的に応じてデータと解析手法を組み合わせることがポイントとなる。

次に「予測」について

もし明日の天気が雨ならば、あなたは外出する時に傘を持つという選択をすることができる。もし明日の株式市場で高騰する株がわかっていれば、今夜のうちに証券会社の担当者へ買いのオーダーを出すことができる。もし明日の売上が激減する見込みが立っていれば、今日のうちにその被害を最小限にする対策を打つことができる。アタリマエのことと言われるかもしれないが、現代のビジネスではもはやこのようなデータに基づく予測を活用することが一般的になっている。そう、雨がふるなら傘を持つというのと同じ程度に。

予測を行う際のロジックは様々あるし、それを実装するためのツール群も昨今充実が目覚ましい。とはいえ、どんなものでも予測をすればいいというものではない。一つを予測できるようになると、すべての指標の予測をしたくなるケースが多いが、何を知ることができれば何ができるか?という戦略的視野と戦術的視野の双方をもち、それに応じて様々ある指標の中から戦略的に優先度をつけ、予測を見ながら戦術を展開する。これが普通である。

具体的に言うならば、売上や営業利益などの「入るお金のフロー」の指標がもっともプライオリティが高いものとされる事が多い。その次に来客数などの「人のフロー」、売れ筋商品(商品群)などの「物のフロー」、店舗維持などに考えるべき「出るお金のフロー」についても法則性があるようであれば指標となるケースもある。それらの指標にプライオリティ付け、組み合わせを行い「KPI」を設計する。KPIの数値が最もよいものとなるように施策を展開していく、といった形となってくる。これがいわゆる「データドリブンマーケティング」や「データドリブンマネジメント」などと言われるものである。いかなるビジネスにも常に競合は存在するものであるが、最初に説明させて頂いた「可視化」と併せ、「予測」もまた知見による差別化で競争優位を得るための方法論である。

最後に「最適化」について

最適化とは、技術領域で言うと機械学習やオペレーションズリサーチなどが当てはまる。お客さまのミッションで該当する箇所として共通するとすれば、SCM(サプライチェーンマネジメント)やCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)の領域が該当する。また昨今では「デジタルマーケティング」領域でも「最適化」は進歩が著しい。例えば、一般消費材の場合、お客さまである読者が最後に醤油を購入した日から次にいつ購入する確率が高いかを算出することが可能である。それがわかっていれば、売る側としては最適なお客さまへのアプローチを図りやすくなる。

上記は古典的な事例ではあるが、このような形のビッグデータ活用も近年さらに活況を帯び始めている。売り手と買い手の最適化、在庫の適正数量管理、無駄なコストの削減、そのほか、金融面では、リスクとリターンの関係からリアルタイムでポートフォリオを最適化するといった研究も発展がめまぐるしく、精度は上がり続けている。決してゴールのない領域でもあるため、データの蓄積、解析、モデルのチューニングなど安定運用するための体制と仕組みを作ることが一番のポイントとなる。

上記3点の軸を上手に組み合わせ、体制を構築し、必要なシステムを安定運用する。結果に応じた施策を速やかに実行に移し、PDCAをより高速で回していく。これがビッグデータ活用から価値を得るための要件となる。よって、システムだけを導入すればいい、データを集めるだけでいい、分析をすればいい、ということでは決してない。必要なのは利益を上げる、価値を生み出すための「施策」にドライブをかける、無駄をなくし、マーケティングやマネジメントを最も効率的なものとする、機会損失を最小化すればその分のバリューは利益として跳ね返ってくる、ということである。マーケティング的に言うならば、最も購入してくれそうな人に、最も購入してくれそうなアプローチで、最も購入してくれそうな商材を推す、それによって機会損失を最小化し、売上の最大化を図るということとなる。

当社では、これら3つのビッグデータ活用についてのソリューションを、お客さまのビジネスやミッションに合わせた形でご提案、構築、運用することを可能とするリソースを有し、提供している。今日のビッグデータ活用については、パッケージ、カタログ売りは大変難しい。お客さまの目的によって合わせたソリューションの個別開発が必要となる他、構築したシステムの運用を通じて価値を生み出すまでのプロセスも、ケースバイケースであることがほとんどである。ハードを用意し、アプリを購入し、本に書いてあることをやるだけではなかなか成果に結びつかないし、そこまでのことであれば、既に他社が先行して導入済と考えてよいだろう。

これからのビッグデータ活用は知恵の絞り合いとなる。目的に合わせてシステム、アルゴリズムを選択し、アウトプットを施策として活用でき、その成果を可視化してPDCAをより高速で回し、改善継続することが求められる。当社はそのお手伝いをさせて頂いている。ビッグデータ活用におけるITシステムは、もはや「ツール」ではなく「パートナー」と呼べる。当社ビッグデータ基盤ビジネスユニットでは、お客さまの力強いパートナーをともに構築し、またミッションやその時々の情勢に見合うよう恒常的にチューニングを図り、かつ安定運用と実務への活用面で価値を生み出すまでのプロセスを総合的にサポートできるものと自負している。

私の次のコラムでは、ビッグデータ活用に関して戦略構築のモデルケースをご紹介しようと考えている。また、運用の面における課題と留意点を確認しながら、ビッグデータ活用のシナリオモデルを今後書いていくことも考えているが、それは次回以降とさせていただきたい。