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第1回 クラウドインフラってなぁに?




シダ部長

シダ部長
若い頃は色々な大規模開発プロジェクトで開発者として辣腕を振るい、その後は経験を活かし炎上プロジェクトの火消し人や、先進的技術の R&D などに携わり「受け攻めのシダ」の異名をもつ。

ハブカくん

ハブカくん
シダ部長の指揮する部署に配属されたばかりで、シダ部長のもとで流行りの「クラウド」について七転八倒を繰り広げる。

竹本トミー

竹本トミー
未来の世界のハコ型ロボット

サービスとしてのインフラ

シダ部長
おーいハブカくん、下期の目標を聞かせてくれないか?
ハブカくん
あ、はい、わかりました、下期は IPMI v2.0 の仕様書を読みながら IPMI のソフトウェアエミュレータを作ろうと考えております
シダ部長
・・・・・・。うーん、それはこの部署のどの業務に関係するのかな?
ハブカくん
・・・さぁ?
シダ部長
いや君ね「さぁ?」は無いでしょ?少しは業務に関係するものを学習してくれないか?業務に関係ないと私も評価しづらいんだよね?わかる?
ハブカくん
じゃぁ何やったらいいっすかね?ぶっちゃけ
シダ部長
(こいつ上司に対する口のきき方から教えないと駄目なのか?)
君は基本的に先進的な技術に関する知識が足りてないので、少しは流行りの技術を追ってみてはどうだい?
ハブカくん
あれっすかね?流行りって言ったら「フルクラックエンジニア」ですか?
シダ部長
クラックしてどうする、それを言うなら「フルスタックエンジニア」だろ?
いや、私が言いたいのはそれじゃないよ、例えば君は「プライベートクラウド」っていう言葉を知っているかい?
ハブカくん
「プライベートクラウド」ですか?いや初耳です、何ですかそのノルマンディー上陸作戦でライアン二等兵を救出する映画みたいな名前は。
シダ部長
二等兵?いや、そーゆー風にちょいちょいボケ挟まなくていいよ、そうゆうのいいから、要らないから
ハブカくん
はぁ・・・
シダ部長
その様子だと全く知らないようだね、ではまずは「クラウドインフラ」という言葉自体をちょっと勉強してきなさい。概要を理解したらまた私のところに来なさい

こうして、ハブカくんはシダ部長から言われた「クラウドインフラ」について調べることになったようです。

~ 1週間後 ~

ハブカくん
シダ部長、シダ部長。調べてきました
シダ部長
随分時間かけたね、あれから一週間も経ってるよ。もうちょっと小まめに報告してくれないかね?もし君が勘違いして別のことを調べていたら一週間が無駄になるんだよ?これが現実の話ならシャレにならないよ?えぇ?あとね、君、上司の名前は二回呼ばない。常識だよ?
ハブカくん
はぁ、報告続けますね
クラウドインフラとは主にインフラに関する機能をクラウドとして貸し出すサービスの事を指します。例えばクラウド界の巨人である Amazon が提供するサービスの AWS では Amazon EC2 と呼ばれるサービスがそれにあたります。
(※1 もちろん、AWS には EC2 以外にもさまざまなインフラサービスがあります)
シダ部長
ほぅ・・・いつものボケた口調と違ってまるで教科書を読みあげているかのような話っぷりだね。まぁいいや、続けて。
ハブカくん
Amazon EC2 は利用者が利用したいときに様々なスペックの仮想マシンを借りることができ、このサービスによって今までのように PC やサーバーを購入、および設置をし、OS をインストールすることなくすぐ利用できるようになりました。
シダ部長
ふ~ん。では質問するけど、その借りた仮想マシンのハードウェアを増強させたい場合・・・例えばハードディスクを追加したい場合とかはどうするのかね?
ハブカくん
・・・・・・、できないんじゃないっすかね?
シダ部長
えぇー!!! ちょっと君ちゃんと調べたのかね?んじゃ「クラウドインフラの三本柱」って調べなかった?
ハブカくん
「クラウドインフラの三本柱」・・・?何ですか?それは・・・。
シダ部長
もー、一週間何してたの?「クラウドインフラの三本柱」とは、コンピュート、ネットワーク、ストレージの3つのリソースを指し、機能の多少に差はあれどどのクラウドインフラのサービスでもこの3つに関してはリソースとして提供されているんだ。
ハブカくんが調べた Amazon EC2 とはこのうちのコンピュートをリソースとして貸し出しているだろう?
ハブカくん
あっー!だから EC2 って Elastic Compute Cloud の略なんですね?
シダ部長
そこまで調べておいてなぜに意味まで調べなかったんだい・・・。
まぁいいや、じゃぁ「パブリッククラウド」と「プライベートクラウド」っていうキーワードについても既に知っているね?
ハブカくん
はい、パブリッククラウドとは前述した Amazon EC2 に代表されるような真の意味でのクラウドサービスであり、利用者はクラウドプロバイダーから貸しだされたリソースを利用するだけの最低限の端末や環境さえあればサービスを利用可能です。多くのパブリッククラウドがそうであるように、一般的にはインターネット経由で利用できるクラウドサービスであることもパブリッククラウドの特徴のひとつです。
一方のプライベートクラウドはパブリッククラウドとは異なり、クラウドプロバイダーが利用者にサービスを提供するのではなく、利用者が自身の環境に物理リソースや環境を用意しそこにクラウド環境を構築して自身で利用したり、自身がそのクラウドを他者に貸し出したりする形態となっています。
シダ部長
ちなみにパブリッククラウドと比べた場合のプライベートクラウドのメリット・デメリットって何だかわかるかい?
ハブカくん
メリット・・・は手元に実機があるから何か故障があった場合にすぐ確認できる・・・でしょうか?デメリットはリソースが有限であるということでしょうか?
シダ部長
それだと「正解」と言うには程遠いねぇ。
パブリッククラウドに対してのプライベートクラウドのメリット・デメリットは多面的な見方をしないと評価ができないということなんだよ。たとえば一例で挙げると以下のようなことが言えるね。
  パブリッククラウド プライベートクラウド
コスト面 メリット:スモールスタートが可能なため、イニシャルコストを抑えることが可能。その他発生する固定費が「利用料」のみであるため、コスト計算が用意。 メリット:規模が大きくなるにつれ規模の経済によるメリットを発生させることができるため、場合によってはパブリッククラウドより費用が抑えられる可能性あり。
デメリット:規模が大きくなるにつれ、利用料もリニアに近い状態で増加する。(クラウドサービスによっては年単位の契約でコストを低減させるオプションがあったり、一定以上は課金されないオプションがあったりする) デメリット:イニシャルコストが(パブリッククラウドに比べて)高くつく傾向にある。
安全性 メリット:サービス提供側のセキュリティ対策を簡単に利用できるため、セキュリティ対策にかかるコストが少なくなる。 メリット:自前で可能な限りいくらでもセキュリティ対策を施すことが可能。
デメリット:サービス提供側のセキュリティに依存する部分があるため、利用者が行なえるセキュリティ対策には限界が生じる。 デメリット:「ローカルは安全」という誤解からセキュリティ対策が蔑ろにされ、パブリッククラウドより安全性の低いクラウドシステムとなるケースがある。
運用性 メリット:インターネットに繋がる環境であればどこからでも運用できる。運用自体がサービス化されている場合がある。 メリット:物理的にアクセスできればどんなことも可能。何かあった際に最終的に自分達でどこまでも対応可能。
デメリット:インターネットに接続できない場合、ほとんど何もできない。何かあった際にサービス提供者にサポートしてもらう必要がある。 デメリット:運用に関して物理的なことまで面倒を見ないといけない。
拡張性 メリット:サービス提供者が提供するサービスを組み合わせてより良い機能を実装できる可能性がある。またサービス提供者が提供する機能であるため、既存の機能との親和性が高いケースが多い。 メリット:自前でどこまでも拡張することが可能。ニッチな要求に対してもコストをかければ応じることが可能。
デメリット:サービス提供者が提供するサービスをカスタマイズできる範囲が限られていたり、全くカスタマイズできない可能性がある。 デメリット:自由に拡張が可能だが、他のクラウドとの互換性が失なわれる可能性もある。
耐障害性 メリット:サービス提供者が提供する各種の仕組みおよびサービスを利用することで低コストで耐故障性を持たせたシステムを作ることが可能。 メリット:自分達が保有する耐故障性が担保された設備にクラウドシステムを構築することが可能。また耐故障性を上げるために自分達で自由に対策できる。
デメリット:耐故障性をある一定以上に上げるためには更に他のパブリッククラウドをも利用する必要が出てくる。 デメリット:ゼロから耐故障性を上げるためには設備投資のイニシャルコストがパブリッククラウドより高くなる。

ハブカくん
部長、この表ですとコストに関する記述がケースバイケースとなっていますが、素人目で見るとプライベートクラウドのほうがランニングコストは安いのではないでしょうか?
シダ部長
いい質問だね。では、プライベートクラウドにかかるイニシャルコストとランニングコストのそれぞれの項目を洗い出してごらん?
ハブカくん
えーと、イニシャルコストは物理マシン代で・・・ランニングコストは電気代ぐらいかなぁ・・・?
竹本トミー
駄目だなぁキミは。あきれて物が言えないよ・・・。
ハブカくん
え?何?急に?キミは誰?
竹本トミー
僕かい?僕は未来の世界からやってきたハコ型ロボットだよ。キミのそのパっとしない答えにシビれをきらしてタイムマシンでやってきてしまったよ。
ハブカくん
何そのパクり設定・・・。
シダ部長
未来の世界からやってきたっていうのはちょっと大げさだけど、彼はわが部署の重要なアシスタントロボットの竹本トミーくんだ。ハブカくん1人だとちょっとつらいから、彼にアシストしてもらおう
ハブカくん
僕1人だとつらいって何がですか?部長がつらいんですか?読者がつらいんですか?
シダ部長
・・・。さてトミーくん、プライベートクラウドにかかるイニシャルコストとランニングコストをハブカくんに教えてやってくれないか?
竹本トミー
しょうがないなぁ、ハイ!プライベートクラウドコスト表~!
ハブカくん
(いや、なんか未来アイテム的な言い方してるけど、ただの表じゃん・・・)
  イニシャルコスト ランニングコスト
施設 DCの契約費やラックにかかる費用 施設の利用料
通信回線 通信回線の契約費 通信回線の利用料
ハードウェア 購入費用 故障時の交換費用
人件費 構築に関する一切の費用 運用者の費用
交通・運輸費 DCへの移動費用や物品の輸送費用 メンテナンスなどによるDCへの移動費用

ハブカくん
なるほど・・・プライベートクラウドって単純にパブリッククラウドと比較できないんですね。
シダ部長
そうだね、パブリッククラウドとプライベートクラウドは「どちらかを利用すれば足りる」というものではなく、必要に応じて使い分けることが肝心なんだ。
もちろん、本当にごく小規模な利用の場合はパブリッククラウドのみで足りるケースがほとんどだけどね。
ハブカくん
そう考えるとスモールスタートが不得手なプライベートクラウドはどうしても選択肢から消えてしまいがちですね。
シダ部長
それに加えて、プライベートクラウドの不幸は「たんなるパブリッククラウドのオンプレミス版」「既製の仮想化基盤製品の代替品」という間違ったアピールが初期に行なわれた所為だったり、「規模感のミスマッチ」が原因なんじゃないかと個人的には思うんだよ。
プライベートクラウドだってクラウドコンピューティングを形成するエコシステムのひとつであるという認識を持ってもらえればもう少し違うイメージになっていたかもしれないね。
竹本トミー
クラウドの利用が進めばまた新しい価値観が生まれると思います。
シダ部長
そうだね。では、次回はパブリッククラウドとプライベートクラウドの連携について話をしようか。