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第1回「省エネってなんだろう?」


省エネの目的はなに?

昨今では、広く「省エネ」という言葉を目にしますが、この言葉の目的を聞くと「(主に電気の)無駄遣いをなくす」という回答が返ってきます。
電気の利用者として考えた場合、わかりやすい指標は電気代であり、目先の実現手段としては「こまめに電源を切る」というものが挙げられます。

しかし、こうした実現手段が本当に役に立っているのかを正しく確認している人は稀です。手段を講じて省エネを行っている気になっているだけの人が大半でしょう。

たとえばエアコンですが、ごみを捨てに行ったり近所のコンビニエンス・ストアに買い物に行ったりする際、エアコンの電源を切ってから出かけ、帰宅後に再起動したとします。電灯のようなものは、電灯が点灯しているか消灯しているかという、ある意味2つの状態で考えられますので、切っている時間分だけ電気は使わなくなりますが、エアコンのようなものの場合、動作しているといっても起動時と安定動作時では消費する電力に差が出ます。
つまり、気温や外出の時間によっては、電源を切らずに、つけっぱなしにしておいた方が電力の消費が少なくなるケースも考えられます。

しかし、多くの人はこうした差分の計測を行っていませんので、省エネのつもりで行っている行動が、状況を悪化させてしまうこともありえます。

手段と目的を混同しないようにする必要がある

多くの場合、省エネを行っているつもりでも、1カ月ごとで見る電気代が安くなっていなければ、多くの人は「省エネの努力が足りない」と考えがちで、行っている行動に誤りがあるとは考えません。使用していないときに電源を切っているのですから、それが間違っているとは思えないのでしょう。

行っているはずの努力が、電気代の削減という期待した効果となって現れないとき、多くの人はもっと努力しないといけないと「我慢」を始めてしまいます。我慢できる範囲で我慢するのは問題ありませんが、痩せ我慢になってしまうと体調を崩してしまうこともありえます。エアコンを運転させることを我慢して、室内で熱中症になってしまっては、いったい何を行っているのか訳が分かりません。

本来の目的は、「快適な生活を保持したうえで、不要な(過剰な)電力を削減する」というものであったはずです。本来手段であったはずのものが、目的にすり替わり本末転倒を起こしている事例を、実際多く目にします。

正しくは、目的を「効果的」に実現する

電気に関する省エネで、電気代を指標にすることは、あながち間違ったものではありませんが、電気代にのみ着目していると、電気代が値上げされた時の無力感は半端なものではありません。「こんなに我慢しているのに」という誤った反発も生じてきてしまいます。はっきり言って意味はありませんが。

少なくとも電気の利用に関して、正しい意味での省エネは「目的を効率的に実現する」というものではないでしょうか。絶対値としての電気代を指標にするのではなく、目的とするものを実現するために必要となるエネルギーを適正値に近づけるという行為こそが正しい省エネの一つの形だと思います。

日頃気づかない無駄を、探してなくす

一般的な家庭における洗濯乾燥機やエアコンなどに着目してみます。
最近では、洗濯機と乾燥機が一体になったものもよく見かけますが、とりあえずここでは単体の乾燥機で考えてみます。

乾燥機において、効率を下げる最大の要因はフィルターの目詰まりではないでしょうか。一例として三日分の下着やタオルを洗濯の後、いったん干したりするようなことなく、そのまま乾燥機に入れることを想定し、目詰まりした状態で乾燥させた場合と、フィルターの掃除を行ってから衣類の乾燥を行った場合を比較すると、後者の方が、フィルター掃除に掃除機を用いて、その電気代分を加算したとしても、電力の合計量は明らかに低くなります。

エアコンにおいても、フィルター清掃をこまめに行った方が良いように感じますが、エアコンのフィルターは乾燥機と比較すると、それほど目詰まりしません。このため、頻繁に清掃を行うと、逆に清掃のためのエネルギーが余計にかかることも考えられます。
エアコンで効率を上げるために手を加えるのは、むしろ室外機です。夏場であれば、室外機とその周辺が、極力熱を持たないように、冬場であれば、室外機とその周辺に熱がたまるようにすると効果があります。

家庭用のエアコンなどは、触媒となるガスを、コンプレッサーを用いて圧伸し、熱交換を行う方法を用いていることが多いため、室外機をいかに効率よく運転できるかがポイントとなります。たとえば夏場なら風の通りを邪魔しないように鉢植えなどを置いてみたり、室外機に日陰を作ってみたりすることが考えられますし、冬場であれば、室外機の外装が黒くなるよう囲ってみたり、側面において発泡スチロールなどで断熱を行ってみたりすることが考えられます。

夏場において、何もしない28℃設定より、前述の省エネ対策を行った26℃設定の方が、必要となる電力が少なくて済むこともあります。無意味な我慢はやめて効率的にいきましょう。

データセンターの省エネ

データセンターは、現在ではなくてはならないインフラの一つです。多くの人には、あまり身近に感じられない施設ではありますが、タブレット端末などでやり取りするメールやメッセージも、参照するニュースや鉄道の運行情報も、こうした情報のやり取りには、必ずといってよいほど、データセンターが関わってきます。

実際、データセンターが消費する電力は、全体の1%を超えているといわれています。これは工場や大規模ビルなどによる電力消費も含めた電力消費で考えていますので、データセンターで消費される電力は、実に大きなものとなります。無論、「今は使っている人が少ないから電源切っちゃえ」などというたぐいの省エネなど選択できません。

「無駄をなくす」というアプローチ以外にないのです。

最初は空調による対策

データセンターは、いろいろな情報のやり取りを行うための施設です。ウェブブラウザで閲覧するための情報や、電子メールなどといった多くの電子情報を格納、処理するためのものです。したがってサーバーやストレージ、ネットワーク機器といった、いわゆるICT機器が主役となります。

ICT機器が主役ではあるのですが、こうした機器で消費される電力は、最終的には熱になります。このような熱を効果的に除去できなければ、ICT機器の動作に悪影響を与えることになりますので、データセンターには空調が必要となります。ICT機器の熱を除去するために用意する空調ですが、この空調機器も電力を消費します。しかも消費する電力は、ICT機器と同等の量であるケースも存在します。
つまり1000Wの機器を安定動作させるために、さらに1000Wが必要となることがあるという意味です。

こうした状況を示すために用いる指標が、いわゆるPUEです。PUEとは、そのデータセンターで消費する総電力を、主役であるICT機器が消費する電力で割ったものです。先のケースであれば、(1000+1000)/1000となりますので、PUEは2.0となります。いいかえれば、本来の目的に使用している電力の2.0倍の電力を必要とする施設であるとみることができるのです。

つまり、PUEを1.0に近づけるほど、電力を本来の目的に使用している施設となります。こうしたPUEという指標の導入によって、「省エネデータセンター≒空調に電力を使わないデータセンター」となり、空調の効率化や、外気の積極利用といった空調メカニズムの改変が実施されることとなり、最近のデータセンターにおいては、PUEの値が1.5を下回るようになってきました。

PUEで本当に良いのか?

UEで本当に良いのか?イメージ

しかし、このPUEという指標は、先の「空調は28℃に設定」と同じように、目安としては使いやすいのですが、本質的な省エネの指標としては中途半端な側面を持っています。

1つにはICT機器で消費される電力を、どこで測定するかという問題があります。
ICT機器ですので、サーバーラックの入口で測定を行うことが考えられますが、データセンターの場合、ICT機器を停止させないために用意されているUPSにおける電力消費が計上されません。
つまり空調部に加算されることになりますので、PUEの値は悪化します。

ある人が、サーバーラックの入口で測定した値と、総消費電力とを用いてPUEを算出し、あらためて別の人が、UPSの入力部で測定した値を用いてPUEの算出を行うと、実質何もしていないのにPUEの値は改善されてしまいます。

このため、UPSをICT機器側としてPUEの測定を行っているデータセンターにおいては、UPSの効率を改善するとPUEの値は悪化するという状況になってしまいます。

先の例では、空調に1000W(説明の簡略化のためWhではなくWを使います)、UPSとICT機器で1000WとなるPUE2.0のデータセンターにおいて、UPSを更新して効率を上げ、900Wにしたとすると、計算式がPUE=1900/900となることから、約2.11となってしまい、設備を更新してデータセンターの電力消費を下げたら、ICT機器も空調も変わらないのにPUEは悪化したという、ある意味目も当てられない状況となってしまいます。

こうしたこともありDPPEという別の新たな指標もあるのですが、こちらはこちらでパラメーターが山のようにあって、お世辞にも使いやすいものではありません。
2つのデータセンターにおけるDPPEを比較しようとしても、単純に比較することはできず、何かのパラメーター、たとえば、いわゆる自然エネルギーの利用度合いとか、特定パラメーターに着目して比較するしかできないので、省エネの指標としてはどうなのだろうというのが本音のところです。

目的のための効率の向上

目的のための効率の向上イメージ

結局のところ、省エネとは何であるのかをよく考えてみると、「電気を使わないこと」ではなく、「目的を果たすために効果的に電力を使用する」ということになると思います。電気代だけに着目した無意味な我慢は体にも悪いですし。

電気は、伝送中や電圧の変換などによって損失が発生し、熱に変わります。こうした「損失」によって消費される電力を削減してゆくことこそが、本来目指すべき、「省エネ」の姿なのではないでしょうか。