NTT DATA INTELLINK SUMMIT 2022講演レポート「【基調講演】実現すべき未来へのプロダクトマネジメント」
NTTデータ先端技術は、2022年12月6日に初の自社主催となるビジネスカンファレンス「NTT DATA INTELLILINK SUMMIT 2022」をオンライン開催しました。
本カンファレンスでは、Tably株式会社 代表取締役およびAdobe Executive Fellow 及川卓也氏が登壇し、「実現すべき未来へのプロダクトマネジメント」をテーマに基調講演を行っていただきました。
仮説検証の繰り返しで磨かれるプロダクト
冒頭、成功している企業に共通する点として、自社のプロダクト事業に強みがあることを指摘されました。これまで「プロダクトアウト 」の考え方は、プロダクト が先行し、独りよがりの発想から顧客を置き去りにしてしまう傾向があり、顧客の声をしっかり聞く「マーケットイン 」の考え方こそが正しいと教えられてきました。しかし、顧客自身が何を欲しているのか自覚していないケースも多い今日では、顧客の声を鵜呑みにするのではなく、本人さえ気づいていない欲求をよく観察することが重要で、つまり、「プロダクトアウト 」と「マーケットイン 」の双方の考え方を持って仮説検証のサイクルを何度も回していき、顧客に価値を提供していくことが今の時代に求められていると述べられました。
プロダクトとは「市場に提供され、なんらかの個人や団体の需要を満たすもの」と及川氏は定義します。故に1顧客のみに対して提供されるものは、プロダクトではないとしています。
このプロダクトはプロジェクトと切っても切り離せない関係にあり、期待される品質を決められた期間とコストで生み出すのがプロジェクトである一方、プロダクトは、プロジェクトの仕組みを使って仮説検証を繰り返して理想を追い求めていくことであり、プロダクトにプロジェクトが包含されているという関係です。また、プロジェクトにはスタートと終わりがありますが、プロダクトには始まりこそあるものの、明確な終わり、ゴールはなく、継続的に仮説検証を繰り返し、顧客に価値を提供していきます。
昨今、このプロダクトの重要性が増しており、その理由としては、提供者視点では「1対多」の提供による収益向上、利用者視点では長期的なコストメリットと集合知的な進化の恩恵が挙げられます。利用者は余計なカスタマイズを求めすぎず、提供者と共にスケールメリットを求めていくことが重要になると強調しました。
しかしながら実際には、プロダクトは汎用品であるためそのままでは顧客の要望を完全に満たさないことも珍しくありません。そこで及川氏は2階建ての志向を目指すことを提案します。自社のプロダクトを1階部分、2階を顧客要望に応えるカスタマイズ部分とするという考えです。この2階部分が肥大化してしまうと、プロダクトの強みであるスケールメリットを享受することができなくなるため、提供者、利用者ともにこれらのバランスをとっていくことが求められているとしています。
プロダクトの成功に導く「仮説のミルフィーユ」
プロダクトの成功とは事業価値および顧客価値の両方が最大化されている状態を指します。時に、事業価値と顧客価値の最大化はトレードオフの関係にあると考えられることもありますが、バランスを取り最適化し、プロダクトの持つ未来、ビジョンの実現に向け顧客とともに歩んでいくことこそがプロダクトの理想形です。
この成功に向けてTablyが提唱しているのがプロダクトを4つの階層で捉える「仮説のミルフィーユ」です。4つの階層とは、プロダクトで実現すべき未来社会、ビジョンなどの「Core」、顧客理解などの「Why」、体験や自社のビジネスを考える「What」、どのように顧客の課題解決を実現するのかという「How」のことを指します。今日では何が求められているのか分からない、すべてが仮説であるという状況のなかででプロダクト開発を進めていきます。これらの4階層は上から下へ順番に考えていくのではなく、上下を何度も行ったり来たりしながら仮説検証を繰り返してプロダクトを磨き上げていくことが重要です。そしてこれはプロダクトをリリースした後も終わりなく続きます。
ソフトウェア開発からプロダクト開発へ
コードの先に利用者を想像することで、どのような課題を解決できるか、また、どんな価値を社会に生み出せるかまで考えることがプロダクト開発です。もちろん、ソフトウェア開発はやりがいのある仕事ですが、プロダクト開発はそれをさらに上回るものを与えてくれるはずです。最後に、ソフトウェア開発だけでなくプロダクト開発も目指してみてほしいと及川氏は締めくくりました。
本件に関するお問い合わせ先
NTTデータ先端技術株式会社
経営企画部
広報・KMO推進担当