FinTechコラム
はじめに
FinTechとは金融(Finance)と技術(Technology)を組み合せた造語で、人工知能やビッグデータなどのITの最新技術を駆使した革新的で利便性の高い金融サービスのことをいう。
金融の世界では、お金を「管理する」「殖やす」「貸す/借りる」「送金する/受け取る」「交換する」「集める」などの分野があるが、FinTechはこれらの分野について変革を起こしていくことが大いに期待されており、米国を中心とするベンチャーキャピタル市場において、FinTech関連のスタートアップ企業への投資が注目を集めている。また、銀行をはじめとする伝統的な金融機関にとっても大きなビジネスチャンスと捉えられている。
そもそも金融業界においては、2008年のリーマン・ショック以来、リスクとコンプライアンス、あるいは、グローバルな金融規制改革が中心的な課題であった。多様な債権を証券化して複雑に組み合わせた金融商品のリスクを、世界中の大手金融機関だけでなく、経済学者らも察知することができなかったことにより起こってしまったグローバルな金融危機から冷めやらぬ状況が続いてきた。事実、国際銀行間通信協会(SWIFT)が毎年開催している国際会議であるSibos(SWIFT International Banking Operations Seminar)の2014年の議論はリスクとコンプライアンスが中心であった。ところが、2015年のSibosにおける金融サービス業界8,000人の参加者の間で一番反響の大きかった言葉は「ブロックチェーン」であった。
ブロックチェーンは金融機関のオペレーションを根本的に変革する可能性をもった技術として捉えられている。ブロックチェーンとは、分散元帳と暗号化技術を活用してすべてのトランザクションの出所を保証するP2P(peer-to-peer)ネットワークである。現在の銀行において、このような保証は煩雑かつ官僚主義的で非効率なバックオフィス・システムによって実現されている。そのため、例えば海外送金をしようとすると数日かかっていまっているのが実情である。しかし、ブロックチェーン技術を用いれば、複雑なバックエンド処理を必要とせずにセキュアで立証が可能な海外送金トランザクションをリアルタイムに近いスピードで実現できるのだ。これは現行のバックオフィスのシステム基盤にかけている膨大なコストを大幅に削減できることを意味している。
いま、金融業界では、個々の銀行がブロックチェーンをどのように活用するかだけではなく、グローバルな金融市場インフラとしてブロックチェーンを捉えて、どうやってこの破壊的イノベーションを活用していくかを業界全体で取り組もうとしている。このように急展開を見せているFinTechに関して、ブロックチェーンをはじめ、さまざまな技術や検証結果などを紹介していければと思います。
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