
Microsoft AI Partner Training Day参加レポート
さる2025年4月3日(木)に行われました、Microsoft AI Partner Training Dayに参加しましたので、簡単にお話しさせていただきます。
Microsoft AI Partner Training Dayの参加目的
Microsoftによると、このイベントに参加する目的は以下のようなものだそうです。(以下Microsoft資料から)
- ・受講対象者
開発者、データサイエンティスト、セールス・プリセールス、最先端の技術者様にご参加をお勧めいたします。 - ・イベントの内容
このイベントでは、生成AI、クラウドスケール データ、クラウドネイティブ アプリ開発機能について学習、それから実験をしていただきます。 - ・没入型ワークショップ
「Bring Your Own Device」(BYOD)ワークショップ、特に3.5時間にわたる没入型のワークショップは、スキルの構築や実践的な学習に非常に役立ちます。リアルタイムでアドバイスを受けながら進めることのできるBYODワークショップに、ぜひご参加ください。 - ・エンゲージメントブース
専門家との1対1の対話で、Microsoftのトレーニング・スキリングの選択肢についてご理解いただき、技術的な疑問点を解消する機会としてご活用ください。 - ・エンゲージコーナー
AIを中心としたデジタルエンゲージメントブースは、参加者の皆様の学習や探索、それからネットワーキングのためのインタラクティブな空間です。ぜひ思い出に残る豊かなイベント体験をお楽しみください。
今回このトレーニングに参加した目的としては、従来のRAGからAIエージェントへのアーキテクチャ移行の考え方を整理したいのがひとつ、もう一つは「実際にPC上で実習」しながら、AIエージェントの開発について流れを確認したい、がありました。日頃はシステム開発に携わっていますので、AIエージェント自体を直接開発する、といった作業は行っていません。今後の提案活動の役に立つのでは…との思いで、参加してみました。
Microsoft AI Partner Training Dayの第一印象
今回は東京恵比寿のホテル(ウェスティンホテル東京)で行われました。会場に着くと、なんと朝食が提供されていて、驚きました。もちろん受付があり、来場者のレジストレーションを行ってはいたのですが、皆さん落ち着いて朝食を召し上がっておられる…。Microsoftのイベントだと大抵熱心なユーザーが待機列を作り、Keynoteセッションの最前列を占めるため、意気揚々と並んでいる…を連想していましたが、それがない。
考えてみれば、今回はMicrosoftとパートナー関係にある企業向けのセッションなので、通常イベントより、間口が狭いわけですね。とはいえ、500人をも超えそうな、十分な数の来訪で、熱気はムンムン、という感じでした。ちなみにこちらのホテルですが、信じられないほど美味なコンチネンタルスタイルの朝食を提供していて、ホテル通の方からは定評ある朝食のようでした。
トラックとセッション
セッションのトラックは下記4つになっていたようです。私は「トラック3 |技術概要: Microsoft CopilotとAIスタック」選択しました。
- ・トラック1 |セールス エクセレンス: Microsoft Copilot & AI Stack
Microsoft AIによる営業の成功促進
Microsoftのセールスが、普段顧客の経営幹部やビジネス上の意思決定者とかかわる際に使用しているアプローチとベストプラクティスをご紹介いたします。 - ・トラック2 |Tech Deep Dive: AI Stack を使用したアプリの構築
AzureでのAIアプリの設計と実装
Azure AI FoundryとFabricを使用したAzure構築の実践的な体験、それから専門家とのディスカッションの機会をご提供いたします。 - ・トラック3 |技術概要: Microsoft CopilotとAIスタック
Microsoft AIエコシステムの深堀り
Copilot StudioとAzure AI Studioのご紹介から始まり、MicrosoftのAIエコシステムについて幅広くご理解いただけるセッションになっております。 - ・トラック4 |責任あるAIとMicrosoftのAIセキュリティ
責任あるAIのナビゲート: MicrosoftのデータドリブンなAIアプローチ
責任あるAIに対するMicrosoftのアプローチと、MicrosoftのAIオファリングの一部がデータとどのように相互作用するかについてご理解いただけます。このトラックは、セキュリティ担当及びコンプライアンス担当向けに設計されています。
トラック別セッションはKeynoteセッション後、大きなホールが壁分割され、それぞれに分かれてのスタートとなっていました。私は勘違いして、ハンズオン実習時には別途会場に集められる、と思ってしまっていたのですが、各トラックそれぞれ別のハンズオンが設定され、座ったまま座学→ハンズオンにスムーズに移行できるようになっていました。
それ以外にも、展示ブースがあり、SurfaceなどのPCはもちろん、関連企業様が出展されていました。パートナーイベントなので、残念ながら「コミュニティ」関連のブースはなかったのですが、参加者をよくよく見ると、Microsoft Most Valuable Professionals(MSMVP)の知古のメンバーがちらほら。というかそれ以上にいらっしゃいました。MSMVP恐るべし。
Keynoteセッション
Keynoteセッションでは「MicrosoftのAIアプローチ」というお題で、従来のRAGモデルから異なる役割・機能を持つAIエージェントによる統合AIモデルの移行について、具体的に語っていただいた、という感じでした。
Microsoftからのメッセージ
MicrosoftのAIにおけるメッセージとして、Microsoft CEOのステートメントは以下の通りで、これを実現するのが、「Microsoft Copilot」ということになります。
- ・すべての人にAIを(無償化、スマホアプリ)
- ・すべてのデータが AI/Agent で繋がる
これを実現するのが、「Microsoft Copilot」であり、全体構成とコンポーネントデザインを明らかにしていきます。
Microsoft Copilotシステムの全体構成
Microsoft Copilotのシステムとしての全体像ですが、以下の3つの視点に分かれるということでした。
- 1.インターフェースとしてのCopilot
- 2.AIエッジとしてのCopilotデバイス
- 3.CopilotにおけるAI Stack
インターフェースとしてのCopilot
CopilotはAIとやり取りするための「インターフェース」として機能し、Copilotの背後にはAIエージェントが有機的に存在します。AIエージェントには
- ・ビルトイン型エージェント
Microsoft Copilotに組み込まれているAIエージェント - ・サードパーティ型エージェント
サードパーティ SaaSで利用するためのAIエージェント - ・カスタマイズ型エージェント
ユーザーが自分で開発した独自仕様のAIエージェント
があり、これをCopilotコントールシステムが統合管理します。カスタマイズ型エージェントントには「一般ユーザー向けエージェント作成基盤」と「開発プロ向けエージェント作成基盤」があり、前者がCopilot Studio、後者がAzure AI Foundryということになります。
AIエージェントの一例として、AIがExcelシートを読み込んで解析し、グラフに表示する、といったデモも披露されました。
AIエッジとしてのCopilotデバイス
低遅延・プライバシー保護・コスト最適化の観点から、AIデータ処理はクラウドばかりでなく、ローカル側で行わるケースがあり、ユーザーが実際に使うノートPCもその一環に含まれます。MicrosoftではこれをCopilot +PCとして戦略化しており、要するに高性能NPU搭載のPCを使ってみてください、という話です。
これの一つの体現化として、Windows 365(ローカルデバイス処理を最大化したクラウド上のWindows OS)がGAしたのを受け、専用デバイスの「Windows 365 Link」の紹介もされていました。クラウドで実行されるWindowsのデータ処理はローカルデバイス上で行われるため、高いスペックのハードウェアを小さな筐体に詰め込んだ形式、となっているようです。Windows 365 Link: シンプルで安全なクラウド PC デバイスに詳細があります。
CopilotにおけるAI Stack
CopilotにおけるAIエージェント開発レイヤーは以下の4層になる、ということのようです。
- 1.開発ツールとアプリサービス
- 2.Azure AI Foundry
- 3.データ
- 4.インフラ
インターフェースとしての開発ツールや連携アプリサービスがあり、それを定義しているのがAzure AI Foundryとなります。Azure AI Foundryは、AIエージェント作成や管理のためのプラットフォームとなり、高機能なAIエージェントを少ない手間で作れるという優れものです。AIエージェントが扱うデータの管理はMicrosoft Intelligent Data PlatformのSaaS / PaaS群が適切に管理します。インフラはここではデータセンター投資を指し、Microsoftは様々な国での積極投資で拡充を行っている、そんな感じでした。
後半は事例ベースの実際の紹介があったのですが、パートナーイベントのため、ここでは詳細に触れないことといたします。
パートナー向けのセッションで、いわゆる開発者向けの突っ込んだ内容、というものはなかったです。が、これは趣旨が違うので程よいセッションだったと思います。事例はパートナーならではの詳細な内容で、大変示唆に富むものでよかったと思います。コメントだけで申し訳ありません。
トラック別セッション
冒頭にお話しした通り、トラック別に内容が異なります。私が受けたトラックは「トラック3 |技術概要: Microsoft CopilotとAIスタック」でして、これ以外のトラックについては、わかりません。基本的にはハンズオン導入前の座学セッションがあり、そのあと実際のハンズオンがありました。
私が受けたトラックでは、Copilot Studioを使ったAIチャットの開発スキームの紹介や、AIエージェントのセキュリティに関するセッションがありました。AIエージェントのセキュリティとは「ユーザーの要求に応じて『そのユーザーがアクセス不可な情報も含めて』回答を生成してしまう」といった行為を制限する、という文脈です。残念ながらAIが自動制御してくれる…という話ではなく、管理者がエージェントのアクセス監査を行って、地道に対処する、ということなのですが、負荷を軽減するための各種ソリューション(Restricted SharePoint Search / Microsoft Purviewの分類 etc.)を使ってください、ということのようでした。
ハンズオンは2つありましたが、さすがにフルスクラッチのものではなく、開発済みの環境での「開発体験を追体験する」といった内容で、ライトではありますが、トータル3.5時間がかかるボリュームの多い充実した内容でした。
カスタムCopilotを作成
Teams内で使用するCopilotを作成します。Copilot Studioを使用しテンプレートから作成するので、とても簡単に作成できました。せっかくAIが(こんな質問をしてみて?)と言っているのに、全然関係のない質問をしていますね。でも参照元であるBingから情報を引っ張ってきて、正しく答えてくれていますね(Snapdragonの答えです)。ついうれしくて…。
次はVisual Studio経由でECサイト向けエージェントをビルドし、データベースに出荷情報の抽出や登録を行わせます。その目的だけのエージェントを構成するというのがミソで、そのための追加コーディングを行っていますね。
カスタムコネクタを持つプラグインでCopilotを拡張
前のラボ環境とは別になります。Azure AI FoundryでAIエージェントを生成します。これは売上管理用システムとなり、売り上げ情報がデータベース化されています。文章で質問すると文章と数字で回答が返ってきます。
このAIエージェントでは「システムプロンプト」で、質問内容の解釈や出力方法を定義させています。このプロンプト文がテキスト化されているので、該当のテキスト文(特定フォルダーに独立して置いてあります)とFunctionをコードすることで、機能の有効化ができます。インサイトの図版化、PDFドキュメントからの参照や、他社製品との比較といった多岐にわたる解析指示をエージェントに簡単に行うことができる、というハンズオン内容と理解しています。
適切にコードでAIエージェントを構成することで、ここまで適切な結果をAIから呼び出せるようになった、これは本当にすごいことですね。少しずつでも学んでいきたいと思います。
別途AMD様のセッションがあり、NPUにおける同社の業界シェアや優位性がいかに高いのか、がよくわかり、サーバーハードウェアには詳しくない私にも興味深い内容となっていました。
お楽しみの懇親会もあり、料理がすごくおいしかった(こればかりで申し訳ないです)だけでなく、マイクロソフト関係者の方ともお会いでき、充実の一日となりました。
- ※文中の商品名、会社名、団体名は、一般に各社の商標または登録商標です。