第1回「フラッシュ・ストレージ出現の背景」


Blue3コラム第1回を担当する小林です。Blue3事業部で主にストレージ製品とそのソリューションに関する提案活動を担当しています。
近頃注目度が高まっているフラッシュ・ストレージ製品の技術とトレンドについて数回に分けて説明していきます。

フラッシュ・ストレージを語る前に、ディスク装置の歴史について触れたいと思います。
ハードディスクは1956年にIBM 305 RAMACから歴史が始まりました。そして1980年にPC搭載サイズである5.25インチHDD(Seagate ST-506)が登場することになりますが、その容量はわずか5MBでした。以後30年以上が経過し、その間にディスク容量は年々増加しています。2014年11月現在で最大6TBのニアラインSASディスクドライブが発表されています。HDD発表当時の実に約120万倍もの大容量化が実現しました。

大容量化に反してディスクドライブの回転速度性能はというと、3,600 rpm(revolution per minute)に始まり、7,200 rpm、10,000 rpmのあと、現在の15,000rpmが登場してからは、これ以上回転数を速くするには技術的問題があり、打ち止め状態になっています。HDD内の円盤を小さくすればあるいは実現出来るかと思いますが、そうすると逆に大容量のものを開発することが難しくなってきます。容量が120万倍になっているのに対して、回転速度は約4倍で頭打ちになっており、アームの動きについても物理的限界が見えているため、ここ10年でディスクのアクセス性能は約1.2倍程度の向上に留まっています。

大容量HDD開発の歴史

HDDの性能推移

また、サーバーのCPU性能はというと、年々飛躍的に技術革新が進んでおり、有名なムーアの法則に則って、ここ10年で約100倍以上の性能向上が実現されています(IBMのPOWERプロセッサー開発データによると、10年でおよそ120倍の性能向上を示しています)。
したがって、現在のCPUとハードディスクを組み合わせた場合、ハードディスクのアクセス性能がボトルネックになって、CPUの高性能を十分生かし切れないという状況が、以前にも増して起こりやすくなっています。

プロセッサーとディスクの性能向上のギャップ

そこで、新たに登場したのがSSDに代表される半導体のフラッシュ・メモリーを使ったストレージ装置です。近年は、DB、DWH、OLTP、VDIなどの環境で高速ストレージへのニーズが高まっており、フラッシュ・ストレージ製品市場の拡大が急務になっています。
また、フラッシュ・メモリーの低価格化により、一般のPC製品にまでSSD搭載モデルが多数販売されるようになりました。また2012年から2017年の5年間で1/5に下落するという予想もあり、今後ますますこの傾向は増していくものと思われます。

フラッシュ・メモリーのGB単価がHDDより安くなるという価格の逆転現象についてはここ数年で実現することは難しいと思いますが、これまでのHDDの立ち位置をSSDが取って代わるという可能性は近い将来にあり得るかと思っています。つまりこれまで本番データ用途に使われていたSAS HDDなどの部分にはフラッシュ・メモリーが使われ、それ以外の部分をSASもしくは大容量のニアラインSASディスクにて補完するようなシステムが増えていくのではないかと思います。

プロセッサーとディスクの性能向上のギャップ

ポイント ● HDDは大容量化は進んでいるが、アクセス性能は頭打ちになっている。 ● CPUは10年100倍のペースで年々進化しており、ストレージ側の性能改善が急務。 ● そこで低価格化しているフラッシュ・メモリー搭載ストレージが注目されている。

次回は、フラッシュ・メモリーとはそもそも何なのか、それからSSDとHDDの違い(長所・短所)について説明します。



第1回「フラッシュ・ストレージ出現の背景」