第5回 フラッシュ・ストレージのソリューションと事例
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フラッシュ・ストレージに関するトピックは、ひとまず今回で最終回となります。
今回はIBM FlashSystemを使ったソリューションや導入事例、Blue3が提供しているアセスメント・サービスについて紹介します。
フラッシュ・ストレージの適用分野
フラッシュ・ストレージを適用する要件は大きく2つに分かれているといえます。
性能重視とコスト重視という2つの要件です。
性能重視の要件には、フラッシュ・ストレージの全体適用と部分適用という2つの方法が考えられます。今回はフラッシュを部分的に使った場合に提唱される3つのソリューションについて詳しく紹介したいと思います。
部分的にFlashSystemを使った3つのソリューション
コストを抑えて効果的にFlashSystemを利用するということで、部分的にFlashSystemを使った3つのソリューションを紹介します。
1.Preferred Read:高速性と高可用性、コスト効率を追求するミラーリング
FlashSystemと通常のディスク装置とでミラーリング(相対ディスク装置の機能もしくはOSミラー)し、低コストで可用性を担保するソリューションです。
Readはフラッシュから優先的に読ませることが出来るので高速アクセスが可能です。Writeに関してはディスク性能に影響されますが、キャッシュによる100% Write Hitによってある程度のパフォーマンスはカバーされます。更新が少なくRead主体のデータ、DWH、BIなどの分析系システムを高速化したいお客さまに最適です。ちなみに平均的なシステムのRead/Write比率はWriteよりReadの方が多いです(7対3程度)。
2.Manual Data Placement:高負荷領域をFlashSystemに置き換え、システム性能を向上
あらかじめ特定の領域にI/O性能が必要な際に、その領域だけを高速なFlashSystemに配置し、性能を向上させるソリューションです。
恒常的に負荷の高い領域、I/Oボトルネックとなっている領域をFlashSystem上に配置することで、システム全体の処理能力を向上させます。単純に該当領域をFlashSystemに置き換えるだけで、既存システムのバージョンアップやチューニング不要でRead/Writeともに性能向上を可能にします。また、既存ストレージの負荷も低減され、移行後は空いた領域を別用途に再利用可能ですので、既存ストレージの容量増強を検討のお客さまに適しています。
3.Easy Tier(自動ILM機能):SVC、Storwizeの自動ILM機能でI/O処理性能を最適化
Manual Data Placementは、あらかじめ性能が必要な領域が分かっている、あるいは特定できる場合のソリューションですが、ここでは性能が必要になる領域が変動する場合に最適な手法を紹介します。
SVCもしくはStorwize V7000/V5000が提供するEasy Tier機能を使い、これらの配下にFlashSystemを接続することで、アクセス頻度の高いデータをFlashに自動再配置して処理性能を向上させるソリューションです。
分析対象や月次年次処理など、用途や時期に応じてアクセス頻度が高い領域が変動するお客さまに適しています。
以上、性能重視のお客さまに向けたソリューションの一部を紹介しましたが、近年の傾向としては、もうひとつのコスト重視という要件で採用を検討されるお客さまも少なくないという事実があります。それほどスピードは速くなくて良いので、容量増によるコストなどを低減したいといったお客さまには、フラッシュ+重複排除or圧縮機能によるパフォーマンス+コスト削減効果を期待されています。FlashSystemであればV840、V9000(※先日発表された新モデル)の圧縮機能、他メーカーであれば重複排除機能を使った製品の注目度があがってきています。今後はこれら付加機能をあわせたソリューションや事例が増えてくると思われますので、別の機会にご説明できればと思います。
FlashSystem導入事例
上で述べた3つのソリューションで効果をあげた日本IBM社の事例について紹介します。
1.Preferred Read
Coca Cola Bottling Company Consolidated(CCBCC)社事例
【課題】
CCBCC 社では、顧客需要の詳細分析を通じて売り上げの機会を活用すべく、既存のサービスレベル・アグリーメント(SLA) に対応しながら、同一分析時間で分析可能なデータを増やす必要がありました。
【導入内容】
FlashSystemとXIVをSVC配下に接続し、ミラーリング機能を用いてReadはFlashSystemに優先的に行うことで高速アクセスを実現させました。
【成果】
- データマートの高速化に成功し、経営判断の迅速化、提携量販店に対しての適切な情報提供が可能になりました。
- バッチ処理スピードが4倍向上
- 現行の時間枠とSLA内でこれまでより20倍の予想データ量を処理
- 過剰在庫または過小在庫のリスクを低減
- TCOの特性を改善
こちらの事例について詳しくは下記ビデオでご覧いただくことが可能です。
http://www.youtube.com/watch?v=vRBZaARUW9g
2.Manual Data Replacement
国内クレジットカード会社事例
【課題】
こちらのお客さまでは、顧客のカード使用の増加によりバッチが突き抜け、業務に必要なデータマートの提供遅延が発生していました。またI/Oチューニングによるコスト増加も課題の一つになっていました。
【導入内容】
高負荷のDWHをFlashSystemに置き換え、データマート作成の高速化とより多くのデータマート作成を実現。
【成果】
- データマート処理性能 x10~50倍増加
(経営判断の迅速化と提携量販店に対しての適切な情報提供) - 平均IO応答時間 10-50ms > 導入後 1ms
- 他社アプライアンス性能比 +250%
- ソフトウェア・ライセンス コストDown
- 電力/設置スペース比 -75%削減
3.Easy Tier(自動ILM機能)
Stuttgarter Straßenbahnen AG (SSB)社事例
【課題】
輸送業のこちらのお客さまでは、低いコストを維持しつつ公共交通ビジネスを運営し、外部の顧客の業務も支援する中で、さらなる輸送増強とコストの軽減が命題となっていました。
高まる容量とパフォーマンスのストレージの需要に対して、設備過剰になり、高い費用がかかっていました。
【導入内容】
既存の他異機種ディスク装置(IBM、EMC、HDS etc)と一緒にFlashSystemをSVC配下に接続し、SVCのEasyTier機能を使って、特にアクセス頻度の高いデータをFlashSystemに自動再配置させ、システム性能を向上させました。
【成果】
FlashSystemの導入により、従来のソリューションに比べてTCOは-50%削減を実現しました。SAP人事系のバッチジョブ実行時間が約1/10に大幅短縮し、IBM Tivoli Storage Managerバックアップ/リストアの所要時間も、-83%の短縮に成功しました。
その他事例については下記サイトにて公開されています
アセスメント・サービス
最後にBlue3が提供するアセスメント・サービス(無償)について紹介します。
1.パフォーマンス分析
【方法】
Oracle AWRレポートの性能情報を提示いただき、Blue3が分析し、レポートを提出します。他にもstatspac / performance monitor / iostat / sar などのモニタリングツール結果から分析可能です。
【メリット】
実機検証に比べ、お客さまのワークロードを大幅に軽減します。実作業量が大幅に減り、効果予測をお客さまへ報告しやすくなります。
【提案の流れ】
- お客さまから性能情報を提示いただく
- アセスメントレポートを提出
- 改善のご提案
【アセスメントレポートの内容】
性能情報を基に、以下の観点でレポートを作成します。
- 処理時間全体に占めるDB処理時間の割合を抽出します。
- DB処理時間をIO処理に関する待機イベント、CPUやそれ以外の待機イベントに分類します。
アセスメント・サービス
最後にBlue3が提供するアセスメント・サービス(無償)について紹介します。
2.TCO分析
【方法】
既存でハイエンドストレージをお使いのお客さま向けに、現行システムを使用し続けた場合とFlashSystemを導入した場合のTCO効果について分析、レポート作成を行うサービスです。
【メリット】
実機検証に比べ、お客さまのワークロードを大幅に軽減します。実作業量が大幅に減り、効果予測をお客さまへ報告しやすくなります。
【提案の流れ】
- ご使用中のストレージ機種、容量などを提示いただく。
- 情報を元にBlue3で分析、レポートを作成
- 改善案のご提示
【TCO分析レポートの内容】
性能情報を基に、以下の観点でレポートを作成します。
- 処理性能・応答性能比較
- 5年間の製品費用比較
- 5年間の保守費用比較
- 5年間のファシリティコスト比較
- 5年間のTCO総額比較
これらアセスメント・サービスについてご興味をお持ちになられましたら、お気軽にBlue3事業部までご連絡ください。
あとがき
5回に渡ってお届けしたフラッシュ・ストレージのコラムはいかがでしたか。今後、ますます利用機会が増えてくるデバイスですので、フラッシュの知識を深めるために役立っていれば幸いです。
新たな技術や製品などについて目立った動向があれば、またこのBlue3コラムでご紹介できればと思っています。
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