プライベートクラウド環境におけるオブジェクトストレージ導入に向けた検証・評価を実施

~導入から運用までのワンストップソリューション化の実現を目指す~

お知らせ
ニュースレター - 2021.06.25
     
近年、Web/メール関連サービスを構成するシステム基盤として普及していたオブジェクトストレージという技術要素が、公共およびミッションクリティカル分野でも少しずつ注目されてきています。オブジェクトストレージは、パブリッククラウド型オブジェクトストレージであるAmazon S3の登場をきっかけにその存在が認識され、格納できるファイル数やデータサイズには理論上制限がないことから、AIやビッグデータ基盤などで導入が先行しています。
このような状況のなかNTTデータ先端技術は、日本ヒューレット・パッカード、スキャリティ・ジャパンと連携して、高度なセキュリティや安定稼働を求めるユーザーから今後需要の拡大が見込まれるプライベートクラウド型オブジェクトストレージ製品の検証・評価を実施しました。

検証概要

評価対象製品として選定したScality RINGは、汎用的なx86 IAサーバーのLinux環境で動作するエクサバイト規模の拡張性をもったスケールアウト型のソフトウェア・ディファインド・ストレージ製品です。オブジェクトストレージでは約6年以上前から国内の大規模環境における導入およびサポート提供実績があることから、公共などのミッションクリティカル分野で要求される品質やサポートレベルを満たすことが期待できます。オンプレミス環境でScality RINGを構成し、S3アクセス機能を中心とした検証作業を実施しました。

図1:検証環境構成

図1で示した検証環境上でオブジェクトストレージとしての基本機能(バケット、オブジェクトの操作、ユーザー管理機能の確認、S3互換性確認)および、実運用を想定したスケールアウト・バージョンアップ・疑似障害発生時の動作確認などを実施しました。

分類項目検証目的
基本機能<バケット操作>オブジェクトストレージの基本機能であるバケットの操作全般、およびメタデータの付与、検索、アクセスコントロールが正常に機能するか検証を行う。
<オブジェクト操作>オブジェクトストレージの基本機能であるオブジェクトの操作全般、およびメタデータの付与、検索、アクセスコントロールが正常に機能するか検証を行う。
<認証>ユーザー管理のための基本操作全般、およびアクセス管理に必要なユーザーポリシーが正常に機能するか検証を行う。
運用<データ保護>適切にデータ保護され、リカバリーすることができるか検証を行う。
<バージョンアップ>バージョンアップ動作および所要時間、バージョンアップ中のクラスタ動作への影響を確認する。
<障害(ハードウェア/ソフトウェア)>システムの設計や要件で想定されている障害に対し、システムが正しく動作すること、意図しない動作や新たな障害が発生しないかの検証を行う。

図2:検証実施概要

検証結果 – 基本機能

基本機能の確認
Scality RINGの一般的なオブジェクトストレージとしての動作と、Amazon S3との機能差異を確認しました。

バケット/オブジェクトの操作などの基本的なS3互換のオブジェクトストレージとしての機能については、AWS CLI、S3 APIやS3クライアントツール(S3 Browser)などからも操作が可能、またIAM互換のアカウント管理機能については、AWS CLI、ScalityのS3管理ツール(S3 Console)から操作や設定が可能でした。Amazon S3と、Scality RINGの機能比較は図3の通りです。

Scality RING未実装のS3互換機能は、順次追従して実装されています。加えてISVパートナー(S3アプリケーションベンダー)とのCertificationを順次拡大しています。

機能AWS S3Scality RING
バケットへのタグ付け
オブジェクトへのタグ付け
タグ検索
ライフサイクルポリシー
データ保護
操作通知
WORM
バージョニング
スナップショット
WEBホスティング
アーカイブ
アクセス許可
暗号化
アカウント・ユーザー管理
AD連携
データ使用量の可視化

図3:Amazon S3/Scality RINGの機能比較

検証結果 – 運用

データ保護動作の確認
Scality RINGは、データ冗長性を保つ仕組みとしてレプリケーションとイレージャーコーディングの機能を実装しています。本検証においては、削除したデータの復元および、レプリケーションやイレージャーコーディング機能により、データが分散配置されることの確認を実施しました。

No.テスト項目テストパターン想定する結果・確認ポイント結果
1データ保護データ復元削除前の状態に復元できる
レプリケーション60KB以下のオブジェクトアップロード時にはレプリケーションになる⇒
ユニークオブジェクト数が1加算され、総オブジェクト数が4加算される
イレージャコーディング60KBを超えるオブジェクトアップロード時にはイレージャコーディングになる⇒
・ユニークオブジェクト数が1加算される。
・アップロードオブジェクトの容量が32MB以下の場合、総オブジェクト数が12加算される。
スナップショットスナップショット作成時点へ復元できる機能実装無し

図4:データ保護動作概要

※データ保護検証における用語

  • ユニークオブジェクト→オリジナルデータ
  • オブジェクト→分割データ

バージョンアップ
検証環境にて、クラスタ全体のマイナーバージョンアップを実施し、バージョンアップにかかる時間を計測しました。RINGのアーキテクチャ上、クラスタ内を構成するRINGノードは、異なるバージョンが混在可能ではありますが、今回はすべてのRINGノード(6ノード)、コネクターに対してバージョンアップを実施しました。また、今回時間の制約の都合上、クラスタが完全停止の状態でのバージョンアップ実施になりましたが、本来は無停止でのバージョンアップが可能です。バージョンアップ作業の所要時間は6ノードで2時間程度でした。

No.作業内容所要時間
1状態確認、パッチ配置15分
2Supervisor更新40分
3ノード更新(6台)1時間(同時更新)
合計1時間55分

図5:バージョンアップ作業概要

今後について

NTTデータ先端技術では本検証・評価活動で培ったノウハウをもとに、Scality RINGの構築/運用ノウハウの蓄積、技術者育成および、日本ヒューレット・パッカード、スキャリティ・ジャパンと共同でのソリューション開発に向け、引き続き検証活動などの取り組みを実施します。

日本ヒューレット・パッカード合同会社からのエンドースメント

日本ヒューレット・パッカード合同会社は、NTTデータ先端技術株式会社様の「オンプレミス環境でのオブジェクトストレージ製品導入に向けた評価作業」に関する取り組みを心より歓迎いたします。

デジタルトランスフォーメーションの実現が企業にとって不可欠となってくる中、データ活用基盤は、データソース増加への柔軟な対応、外部サービスとの連携、ビジネスの変化に合わせた機能拡張といった要素が必要不可欠となってきております。
そのような中、今回の取り組みは、貴社がこれまで培ってきた当社ハードウェアの豊富な導入実績と、Scality RINGの知識を組み合わせた、貴社の新たなビジネスモデル開拓に向けた大きな一歩を踏んだものと確信しております。

この取り組みをきっかけとして、当社製品やサービスとScality RINGの組み合わせによるデジタルトランスフォーメーションのさらなる推進に貢献いただけることを期待しております。

日本ヒューレット・パッカード合同会社
コアプラットフォーム事業統括
執行役員
本田 昌和

注釈

*文中の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

報道関係のお問い合わせ先

NTTデータ先端技術株式会社
営業統括本部
営業企画推進部
企画担当
TEL:03-5843-6860

検証内容に関するお問い合わせ先

NTTデータ先端技術株式会社
基盤ソリューション事業本部
プラットフォーム事業部
プロフェッショナルサービス担当
TEL:03-5843-6820