デジタルトランスフォーメーションの今と未来 最終回

~デジタルトランスフォーメーションとAI、つまりAX~

2026.08.18

     

1. はじめに

前回(第2回2021.11.12)コラムから約5年が経とうとしています。この間、人工知能は飛躍的な発展を遂げ、デジタル社会は新たな局面に入ってきました。変革をもたらすと言われてきたデジタルトランスフォーメーション(DX)は、当初のさまざまな解釈の下で多くの見識とともに語られてきましたが、進展の方向性はより明確になってきています。それは、「AIを用いた自律的なDXの実現」、すなわちAX(AI Transformation)への進化です。ここでいうAXとは、AIがデータを分析し、判断を支援し、さらには業務や組織の改善を自律的に進めることで、DXを継続的に高度化していく取り組みを指します。
今回は、DX推進のための留意点とともに、DXの未来は人工知能と共にあるという話をお届けし、このシリーズの最終回としたいと思います。なお人工知能については、別のシリーズコラムである「AI入門」「続・AI入門」をご参照いただければ幸いです。

2. DX推進の留意点

前回、DXを支える技術としては、クラウド・マイクロサービス・バイモーダル・セキュリティ・人工知能などが考えられると解説しました。これらの技術を活かしながら、どうビジネス変革を実現していくのか。その際にはどんなことに留意すればよいのかについて、すでに多くの論点が語られていますが、ここであらためて整理したいと思います。

(1)目的と課題の明確化
前回までに何度も述べたように、またよく言われているように、DXの目的は単なるデジタル化ではありません。ビジネスモデルや業務の変革なのです。従ってこの目的が曖昧なままで進むと単なるツール導入となります。例えば生成AIについても、「使ってみよう」から始まるとは思いますが、単なるAI導入にしてはいけないのです。何の目的で、どんな課題を解決するためにデジタル技術を導入するのか、どんな価値を見出すのかを、まず初めに明確にする必要があるのです。

(2)経営層のコミットメントを得る
DXは現場任せでは成功しません。DXは最終的には組織全体の変革が必要となるため、経営層の意思と継続的な支援が不可欠です。そのためには経営層が旗振り役となり、リソースの配分や改革の優先順位を明確にし、組織全体として推進する必要があります。

(3)現場の巻き込みや導入改革に対する抵抗感の低減
DXにはやり方の変更が伴うため、特に現行のやり方で進めてきた現場からの強い反発も予想されます。そのため、いかに現場を巻き込んだ改革を進めるのかが重要です。早期に現場との深い意見交換を実施し、できる限り意見を取り込み、また部分的な成功体験を積み重ねることで、「やらされ感」を払しょくすることが重要です。

(4)業務プロセスの可視化と見直し
業務プロセスを可視化します。しかも文章での記述で終わらせるのではなく、誰もが理解する詳細なフローチャートで表現すると、無駄なフローが見えてきて、削除することにつながります。デジタル技術をどう入れ込むのか、業務を再設計するのです。決してアナログのままデジタルを入れ込む「IT化」ではないデジタル化を目指すことが必要です。

(5)データ活用基盤の整備
DXのキーはデータです。蓄積したデータをいかにビジネスや業務に活かすか?AIの活用の際にも、過去のデータから将来をどう推論するか?となるので、このデータ活用基盤は散在するデータを品質をそろえて統合し、全員で活用できる基盤として整備することが必要です。また、誰がどう活用してよいかなどのデータガバナンスの取り決めも重要です。機密情報が勝手にAIの学習に使われることも防がなくてはいけません。

(6)外部パートナーの活用
すべてを内製化する必要はありません。自分たちの強みと弱みを認識し、弱みについては外部パートナーの力を借りることを考えます。AIは典型的な例であり、外部のサービスを使うことが前提となります。その際にはパートナーとの契約を特に注視し、データ活用などの際の取り決めをしっかりと把握することが重要です。また、パートナーからの知見はAIに限らず多く取り入れられるようにすることも、成功につながります。すなわち「伴走型」のパートナーを選ぶことがポイントです。

(7)継続的な取り組みが重要
DXは一度実施して終わりということではなく、常にアップデートする体制が必要です。変化し続ける組織が重要なポイントになります。

以上、主な7項目の留意点を挙げました。このようにしてDXを進めることで、成功に近づくことができると思います。特に、データ活用基盤の整備と継続的に改善し続ける体制は、次に述べるAXを実現するための前提条件にもなります。

3. DXの未来、DXからAXへ

さて、ここまでお話ししてきたDXですが、その先にはAIを活用して変革を継続的に高度化するAXがあります。前章で述べた通り、DXではデータを整備し、業務プロセスを見直し、組織として改善し続ける仕組みを作ることが重要です。AXは、その土台の上にAIを組み込み、判断・予測・改善をより自律的に進めていく段階だと捉えることができます。ここでは、DXからAXへと進化していくプロセスについて解説したいと思います。

前章の最後に記述した「DXは継続的な取り組みが必要」という考え方は、AIを活用したAXの位置づけにもつながります。AXとは、AI活用によるDXの高度化ということになります。DXとしては、顧客データや業務データを活用した新サービス提供や業務フロー改革までを推し進めてきました。この土台に、さらにAIによる高度化を実現します。つまりAIによる複雑で高度な推論を使うわけです。AIを過去のデータから未来を予測するツールと捉えると、例えば需要予測であったり、故障予知であったり、人間が考え、判断していた部分をAIに置き換え、より高度な予測を行うことができます。これがAI化の第一段階です。さらに第二段階として、AIエージェントの登場が考えられます。これは、自律型システムや自律型組織への進化を意味します。
例えば、自律的に最適化されるサプライチェーンや、自律的に改善を続ける業務プロセスが考えられます。人間が介在することなく、環境変化に応じて自ら改善する段階です。この領域で初めてAX化ということになります。自律的に最適化されるサプライチェーンとは、どのようなものなのでしょうか。DXによってサプライチェーンを構築し、改革が施されたのちの運用データをさらに解析し、課題が認められれば、AIが改善案を提示し、人間が確認・承認したうえで実行する段階から始まり、将来的には一定の範囲で自律的に最適化する仕組みへ進化していくと考えられます。ここでいう自律的な最適化とは、このような仕組みを指します。自律的に改善を続ける業務プロセスも同様です。例えば、顧客対応では、問い合わせ内容をAIが分析し、回答候補を提示するだけでなく、よくある問い合わせをもとにFAQや業務手順そのものを改善していくことが考えられます。
このように、AIを活用して継続的な改善を仕組みとして回し続けることが、AXの本質です。つまり、さまざまな環境の変化に強い自律型の組織が構築できることにつながります。
このAXを実現するには、もちろんその礎となる永続的なデジタルデータの整備が不可欠です。常にAIの解析に必要なデジタルデータを蓄積し続け、しかもさまざまなデータを活動組織全体として統合可能としたプラットフォームにて管理できる体制が必要です。そしてデータを俯瞰的に分析するAIを用意することが必須です。また、それを使いこなす人材ももちろん必要です。このようにしてAXを実現していくことがDXの未来の姿なのです。

DXからAXへ

4. おわりに

DXの未来、すなわちAXについて解説しました。AIの進化はとどまることを知りません。ここでお伝えしたAX(=自律型の未来)も、近いうちに常識となるでしょう。その際には、前述の通り、使いこなす人間が必要であり、自律型AIと共存し、ともに高めあっていく組織が必要になってくるのです。このような組織をどう作っていくのかが、現在のわれわれに課された課題であると思います。
今回でデジタルトランスフォーメーションのコラムシリーズを終わりますが、ここで述べた未来は、もはや遠い将来の話ではありません。次のステップとして、まずは自社のデータがどこにあり、どの程度活用できる状態にあるのかを把握すること、次にAIを適用すべき業務領域を見極めること、そして小さな成功体験を積み重ねながら継続的に改善する体制を整えることが重要です。ぜひAXをこれからの変革の視点として捉えていただき、検討を始めていただければと思います。本コラムが、今後のDX・AX推進を考える参考になると幸いです。これまで、お付き合いいただきありがとうございました。

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