デジタルトランスフォーメーションの今と未来 第1回

~ デジタル社会の構築に向けて ~

2021.10.19

  

2021年9月、日本にデジタル庁が開庁しました。日本は諸外国に比べてデジタル化が進んでいないとの指摘が以前より言われており、重い腰がようやく上がったともいえます。 また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、迅速に効率的な対策を進める必要に迫られる中、デジタル化の遅れが浮き彫りになったことも開庁の後押しとなりました。
また、以前から、デジタルトランスフォーメーション―“DX”というキーワードを大変良く耳にするようになり、今では盛んに使われています。一言で言うと、社会のさまざまな変革を、 デジタル技術を使って成し遂げようとする潮流です。新設デジタル庁も、このDXの一つとなる行政サービスのDXと位置付けられるでしょう。

このコラムでは、デジタルトランスフォーメーション(DX)について、ポイントとなる考え方を今一度整理し、分かりやすく解説したいと思います。

デジタルトランスフォーメーションとは?

既に、多くの書籍、ニュースや講演などで語られているデジタルトランスフォーメーション(DX)については、良くご存じの方も多いと思いますが、今一度、その定義を振り返るところから解説したいと思います。
この言葉は2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授が使いはじめた言葉と言われています。情報技術「IT」の浸透により、人々の生活を、どんどん良い方向に向けて行くという概念、であると言われています。 また、その領域に達するまでには、図1で示される3つのステップを経て、満水されることになると言われています。

デジタル・トランスフォーメーション(DX)とは

図1:デジタル・トランスフォーメーション(DX)とは

具体的に、この3つの段階を見て行きましょう。

デジタル・トランスフォーメーション(DX)の3つの段階

図2:デジタル・トランスフォーメーション(DX)の3つの段階

第1フェーズでは、IT利用による業務プロセスの効率化です。
これは、これまでの社会活動として、業務の効率化や、仕事の品質向上を目指して、懸命に磨き上げられてきた業務のプロセスをさたにITを用いて、人間のお手伝いをさせることで、 人間のミスなどを取り除いた形での業務プロセスの強化を行う段階となります。

第2フェーズでは、ITによる業務の置き換えです。これは、業務そのものを、もうITに代替えさせてしまうという段階になります。分かり易い例でいうと、スーパーやコンビニなどのセルフレジや、 最近良く使われる様になってきたRPAなどがこの段階と言えます。

そして第3フェーズでは、業務プロセスをはじめからITに合わせて、作り込んで行くという段階です。これにより更なる効率化、品質向上を目指した、業務プロセスの変革の段階に当たります。
この第3フェーズに到達することで、デジタルトランスフォーメーションが達成できることになります。


デジタルトランスフォーメーションにおいては、ステップが進むにつれて、ITの役割が変化していきます。図3にあるように、「従来」の第1ステップから第2ステップにかけては、 ビジネスの生産性向上のために人が進める業務プロセスをITが支援するという一方向の関係にありました。
ところが、「今後」と書かれた第3ステップでは、ITはビジネスに密接に関係します。

IT向けにチューンされた業務プロセスを支援することでビジネスに新たなイノベーション、変革を起こし、ITサービスそのものがビジネスとなり、またビジネスがITに新たな要求を挙げるような関係になってきます。
この今後のビジネスとITは双方向に一体となった関係で進んでいきます。

デジタルトランスフォーメーションの従来と今後

図3:デジタルトランスフォーメーションの従来と今後

つまり、トランスフォーメーションの進展はビジネスとITの相互依存で進んでいきます。デジタル時代のイネーブラ(後見人、後押し役)として、ここに挙げるようにSNSやビッグデータ、クラウド、スマートフォンが 新たなビジネスの要件を後押しし、ビジネスの変革を成し遂げるとともに、さまざまなビジネス要件、カスタマーエクスペリエンスやコスト削減、スピード、スケールなど、さらにさまざまなビジネス要件が新たにイネーブラに要求を突きつけ、IoTやAIといった技術を研ぎ澄ましていきます。
このようにしてビジネスとITの無限の相互依存でそれぞれが進展していきます。

ビジネスとITの無限の相互依存

図4:ビジネスとITの無限の相互依存

デジタルトランスフォーメーションの代表的な例として、以前より多く語られてきたのは皆さんもよくご存じのシェアリングサービス、UberやAirbnbがあります。
タクシーを利用したいときにスマートフォンのアプリから行きたい場所を入力すると、一般の車所有者の方でUberに登録されている方へ、乗車希望者がここにいますよと案内が連絡され、 駆け付け可能な登録者が返答したうえで、現地に向かい、利用してもらうというサービスは、利用者にとっても、またサービス提供者にとっても、それまでのタクシーサービスやレンタカーサービスと比較して、 効率的なサービスを実現したため、一気に既存サービスの利用占有率を追い抜いてしまいました。

タクシー業界における占有率を表したグラフ

図5:タクシー業界における占有率を表したグラフ

このように、デジタルトランスフォーメーションの真髄は、既存のビジネスモデルを根底から覆し、あらたなビジネスを構築するところなのです。
良く言われるように、既存のビジネスの流れの中で、例えば紙で処理していたプロセスをパソコンで置き換えたようなことは、確かに作業の効率化になっていますが、デジタルトランスフォーメーションとは言えないのです。

既存のビジネスモデルを覆す、新たなモデルを作り上げる、その手立てとしてデジタル技術を活用する。このことを基本として、これまでにもさまざまなデジタルトランスフォーメーションが引き起こされてきました。

代表的な例としては、何といってもGAFAにも属するAmazonです。Amazonは最近ではさまざまなビジネス業態を持っていますが、まずは書籍をはじめとする物販流通業態を変革しました。 以前の流通小売り企業としては北米ではWalmartが代表的ですが、インターネットによるショッピング革命を起こし、現在に至っています。またレンタルビデオでは、これもネット配信技術をベースに、 それまでの媒体レンタルのBlockbusterをNetflixが追い抜いてしまいました。このように、デジタルトランスフォーメーション(DX)は、既存のビジネスを、利用者目線、またサービス提供者目線で根底から見直し、 あるいは打ち砕き、最新のデジタル技術を駆使して新たなビジネスを構築しようとする動きなのです。単なるデジタル化ではない、デジタルトランスフォーメーションなのです。

最新のデジタル技術を駆使して新たなビジネスを構築した事例

図6:最新のデジタル技術を駆使して新たなビジネスを構築した事例

従って、これまで述べてきたように、デジタルトランスフォーメーションを実行しようとする際には、単にデジタル技術を適用するということではなく、ビジネスのイノベーション、 つまり既存を変革するビジネスや新たに起こそうとするビジネスは、社会にどのようなインパクトを与え、何を対象の業務や社会全体にもたらすのか?働きかけるのか?をイメージしながら、デジタル技術の活用を考えていく、あるいは、その時点で存在しない技術があれば、それを創り出していく・生み出していくことが求められるのです。

これまで、この他にも、北米やアジア圏を中心にさまざまなデジタルフォーメーションに位置づけられる動きが出てきています。

特に金融系においては、以前よりFintech(フィンテック)と呼ばれる動きがありましたが、まずは(1)キャッシュレスの動きです。
現金を電子化するだけで、例えば露天商を含めたさまざまな業態の方々を取り込め、 商圏が格段に広がるだけでなく、金融データと販売データを組み合わせることによりCRMといった高精度の販売戦略立案が可能になります。また、SNSによる送金なども可能となります。
これはメッセージを送る感覚で、送金が可能となり、既存の金融機関が行う送金業務での手数料よりも格段に低い料金で送金可能となります。例えば国境を越えて出稼ぎに出ている方が国元に送金する際等に大変有効で、 アジア圏を中心に広く使われています。また貧困地域への寄付金等の送金にも活用できています。

(2)貸金の与信調査も、被審査対象のさまざまなデジタルデータ(返却率だけでなく、購買データやプロファイル、アンケート回答、SNS人気度なども)を用い、特徴的な部分を点数化(スコア化)することで、 精度の高い調査結果を出すことが可能となり、既存の貸金市場の拡大、回収率の向上に寄与しています。(3)株価予想、変動分析などにも、さまざまなデジタルデータを活用する動きが広がっています。 これにより更なる高精度予想や市場拡大につなげているのです。

金融以外にも、製造業での例は、サブスクラムの考え方を基本に、作る>売ではなく、作る>使う、という中に、デジタル技術をうまく取り入れ、効率的や永続的な使い方を実現できています。 例えば航空機のエンジンを供給しているGEはエンジンを作って売るのではなく、作って使ってもらう中で、エンジンの状態を常に監視し、最適な時期に最適なメンテナンスを施すことにより、トラブルを未然に防ぐなど、 効率的な航空機の運用に寄与しています。

国境管理においても、デジタル技術を活用し、変革が進んでいます。元々、国境管理では、旅客管理、人物警備管理や、荷物の検疫、税金処理といった多くの業務が存在し、これまでは別々の管理機関、団体でそれぞれの業務が遂行されていました。 日本で言えば、国土交通省、法務省、警察庁、農林水産省、財務省などの行政機関や、航空会社が関与しており、出入国の際には、空港等で何度もさまざまなチェックを受けることが必要であったのです。
これを一度のチェックで済ませ、あとは顔認証技術で本人を確認し、デジタルデータをそれぞれの機関に流通させることにより、素通りできる仕組みなどが考えられており、国境管理のDXと言えます。

また、デジタルトランスフォーメーションは、実は完成形などはなく、常に進化を続けるものでもあります。例えば冒頭に紹介したUberは、ご存じのようにUberEatsをはじめさまざまなサービスとの繋がりを進め、進化を続けています。 コアとなるUberのAPI (Application Interface) を開放することによりAPIエコノミーを実現しており、このような動きも今後多く登場すると考えられます。

DX事例 UberAPI Uberのサービスと他のサービスをつなぎ合わせる

図7:DX事例 UberAPI Uberのサービスと他のサービスをつなぎ合わせる

次回(第2回)では、デジタルトランスフォーメーションの位置づけや、支える技術について見ていくことにします。

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