第3回「フラッシュ・ストレージの形態と市場動向について」


前回まではフラッシュ・ストレージに搭載されているフラッシュ・メモリーそのものについての説明でしたが、いよいよ本題のフラッシュ・ストレージ装置に関する内容です。

フラッシュ・ストレージの形態

フラッシュ・ストレージと一口に言っても、いろいろな形態の製品が発表されています。
ここでは、カテゴリーに分けて説明します。

1.PCIeフラッシュ系(サーバーサイド・フラッシュ)

例:Fusion-io ioDrive

サーバーのPCIeバスに直結するサーバー内蔵型のフラッシュ・メモリーです。主にPCIeアダプターとして提供され、サーバーのPCI Expressスロットに挿入して使用します。後に述べるSSD搭載型外部ストレージ装置と異なり、RAIDコントローラーやSASインターフェースなどのディスクIO用通信インターフェースを介さないので、レイテンシー(デバイスに対してデータ転送を要求してからその結果が返ってくるまでの時間)が非常に高速です。

PCIe型とSSD型の違い

またHBAやFibreChannelスイッチ(SANスイッチ)などが不要、つまりSANを構築しなくて良いのでコスト面、運用面についてのメリットもあります。逆に、サーバーのPCIeスロットに挿入するため枚数に限界があり、外付けデバイス系と比べると構成可能容量は少なくなるのがウイークポイントです(2枚構成でソフトウェアRAID構成にすると更に構成可能容量は減ります)。また、複数サーバーで共有が出来ない点や保守交換時にサーバー停止が必要になる点もデメリットとして挙げられます。

2.SSD系

例:HP StoreServ 7450、NetApp EF550

既存ディスク装置へHDDのかわりにSSDを搭載したもの、あるいは新規に開発されたSSD専用装置です。先にあげたサーバー内蔵型と違い、外付け装置に搭載するので複数サーバー間で共有接続が可能です。また大容量構成も可能です。ただしSSDは、第2回で説明したようにHDDをエミュレーションしているので、Flashチップが本来持っている高速性を十分に発揮出来ていない側面があります。したがってPCIeフラッシュ系や後述のオリジナル・デザイン系と比べて、IOPSやレイテンシーなどの性能は落ちます。

3.SSD + 重複排除(De-dup)機能系

例: Pure Storage FlashArray、EMC Xtrem IO

上記SSD系の製品に、さらに重複排除(De-duplication)機能を装備したフラッシュ・ストレージ装置です。重複排除とは、書き込み対象の複数データの中から重複するデータ領域を見つけた場合、一つだけをディスクに保存し、重複領域を共有することでストレージ容量を削減・節約する技術です。主にバックアップ容量削減の目的で使われてきた技術ですが、フラッシュ・ストレージ製品にも実装されるようになりました。なぜかというと、重複排除機能による容量コストの低減と無駄な書き込み回数を減らせることでSSDの寿命延長が可能になるからです。重複排除の効果が大きいシステム、特にVDIなどの仮想デスクトップ環境などで効果を発揮すると言われています(デスクトップPCはOS領域やオフィス系アプリケーションファイルなどのデータ重複が多いため)。逆に重複排除の効果が出にくいシステムには不向きです。また重複排除機能を使うことでのストレージ装置の性能劣化(オーバーヘッド)を考慮しなければならないので、純粋に高パフォーマンスのみを要求されるシステムにも向いていません。

4.オリジナル・デザイン系

例:Violin Memory、IBM FlashSystem

フラッシュ・メモリーをメモリーとして使用するアーキテクチャーの製品です。既存のSSDを使わない独自に設計されたフラッシュ・ストレージ製品です。HDDをエミュレートしているSSDと違い、ダイレクトにフラッシュ・チップへの書き込みを行うこと(同時複数処理)が可能です。既存のHDDやSSDは一時点に一度のI/Oのみ可能なので、これらよりも高パフォーマンスを実現することが出来ます。これらを図解したものが以下になります。

Flash専用システムとSSDベースシステムの違い

独自設計のIBM FlashSystemはFPGA(Field Programmable Gate Array)という基盤配線を使ったハードウェア制御による同時並行アクセスなので、汎用CPUを使用しているSSDベースのシステムと違って、ソフトウェア処理のオーバーヘッドを受けません。また、汎用SSDとは異なるアプローチで高信頼性(高可用性)の設計が施されている点でもSSDベースのシステムと比べてメリットがあります(詳しくは第4回のコラムで説明したいと思います)。

オール・フラッシュ・ストレージ(All Flash Array)製品の市場動向

最後にオール・フラッシュ・ストレージ製品の市場動向やシェアについて説明します。
ストレージの全体的な市場の変化についてですが、既存のハードディスク市場は徐々に減少しており、代わりにオール・フラッシュ市場が伸びて来ております。第1回で述べたように、フラッシュ・メモリーの低価格化やストレージに求められる要求性能が高まっていることが理由かと思います。

次に、オール・フラッシュ・ストレージ製品のマーケット・シェアについてですが、2013年の国内市場では、IBM FlashSystemがシェア61%で首位、2位に同じくオリジナル・デザイン系のViolin Memory社が続いております。今回述べたように各メーカーによって多種多様なフラッシュ・ストレージ製品があり、市場としても伸びている段階です。したがって今後どういった形態の製品が顧客に受け入れられていくか、動向を見守りたいと思います。

参照URL

ITpro Active

ポイント ● フラッシュ・ストレージ製品は、SSDを使っている陣営と非SSD(オリジナル・デザイン or
  サーバー内蔵)陣営とに二分される。
● フラッシュ市場は伸びている(SASディスク市場は減少傾向)。 ● フラッシュ市場シェアは今のところオリジナル・デザイン系が強い。

次回は、今回少し触れたIBM FlashSystemの詳細説明をしていきたいと思います。



第3回「フラッシュ・ストレージの形態と市場動向について」