サプライチェーンの管理 - トレーサビリティを超えた問題と解決方法(後編)

2021.08.05

  

1. 概要

NTTデータグループはこれまで、ブロックチェーン分野における世界的なリーディングカンパニーとして、さまざまな大手アナリスト企業から常に高い評価を受けてきました。特に、NTTデータグループのブロックチェーン技術・ノウハウを持つ人材の技術集約拠点である「Blockchain Center of Excellence(以下、Blockchain CoE)」では、 トラック &トレースソリューションが直面する多くの運用上の問題に対処するため、さまざまなブロックチェーンベースのモジュールとコンポーネントを設計し、実装しています。また、これまでサプライチェーンの課題や市場のダイナミクスについても深く理解し、トレーサビリティを超えた総合的なソリューションも開発。お客様における複雑なサプライチェーンの問題を解決してきました。

前編ではサプライチェーンの分野において、複雑さを増すトレーサビリティを超えたところにある問題や留意すべき点などを紹介しました。後編となる今回は、NTTデータグループのサービスを利用した実例や機能の解説を用いて、ブロックチェーンにおける様々な課題解決の方法を詳しく解説します。

(※執筆協力(敬称略):NTT Data Global Delivery Services Pvt. Ltd. (Pune) Vineet Mago, Tushar Katkar)

サプライチェーンの管理 - トレーサビリティを超えた問題と解決方法(前編)はこちら

2. NTTデータのサプライチェーンマネジメントのソリューション

NTTデータグループでは、サプライチェーン管理のための複数のブロックチェーンソリューションを積極的に開発しています。その中でも、ブロックチェーン技術をベースとしたDX推進ソリューションであるBlockTrace ®ソリューションは、GS 1/EPCIS互換のトラック&トレース ソリューションにブロックチェーンベースの公証インターフェースの提供が可能です。
そのソリューション群の一つであるFresh Food Traceは、食品の 「ブロックチェーンで検証された」 追跡データ提供を目的としたソリューションセットです。IoTベースのセンサーを使って、食品の原産地から最終消費者までの遠隔測定データを正確に追跡します。
Blockchain based Document Management Platform (BlockTrace DMP) もあり、こちらはブロックチェーンでリンクされた分散ストレージ制御ソフトウェアで、共有ドキュメントやファイルを管理するためのものです。こうした一連のソリューションは、NTTサービスエボリューション研究所が設計し、 NTTデータが開発しました。

これらすべてのソリューションは、複雑なグローバル・サプライチェーンが直面する多くの問題を解決します。

2.1 ソリューション

BlockTraceは、ブロックチェーンベースのサプライチェーンのトレーサビリティプラットフォームで、サプライチェーンにおける製品の行程を通して追跡情報を収集します。GS 1、EPCISなどのグローバルなサプライチェーン標準と互換性があり、ブロックチェーンで検証された情報は、エンドユーザーを含むさまざまなステークホルダーと即座に共有されます。サプライチェーン・データの管理を提供する複数のモジュールも備えており、公証モジュールは、情報ハッシュを受け取り、指定されたブロックチェーンネットワークに投稿します。ビットコインやイーサリアムなどのパブリックなブロックチェーン、あるいはベスウやクォーラムなどのプライベートなブロックチェーンに関する情報をやりとりし、公証が可能なこのソリューションは、トレーサビリティ・透明性・情報共有の課題に対処します。

また、企業が不要な製品のリコールシナリオを簡単かつ効率的に処理できるようにしながら、最終消費者に情報を提供することもできます。このソリューションは、さまざまなビジネス領域で運用されているサプライ・チェーンの自動化と調整に関する課題の一部を解決します。

図:BlockTrace 全体像
図:BlockTrace 全体像

Fresh Food Traceでは将来の検証のため、ブロックチェーンへ保存する前にIoTセンサーを使ってテレメトリデータを収集し、入力データの安全性の問題を解決しようとしています。このように、農場や工場からスーパーマーケットの棚まで、複数の保管、輸送、配送ユニットを経由して商品の全行程を記録することができます。企業はこれを利用して異常を追跡し、必要な対策を講じることで被害を最小限に抑えることが可能です。

このソリューションは、Hyperledger FabricおよびHyperledger BesuベースのBlockchainネットワークと統合できます。IoTユニットは、取得したデータを定期的にブロックチェーンネットワークに送信できる温度センサーと位置センサーで構成されています。したがって、入力データの安全性に関する運用上の課題に対処し、ワークフローの自動化を促進します。

また、Blockchain based Document Management Platform (BlockTrace DMP) を社内で実装しています。これは名前が示すように、大容量のファイルやドキュメントを保存するためのオフチェーンのデータ管理プラットフォームです。ブロックチェーンベースのスマートコントラクトは、これらのドキュメントの真正性と公証を提供し、アクセスの管理と制御に役立ちます。このソリューションでは、カスタマイズされたIPFSをオフチェーンストレージネットワークとして使用し、Hyperledger Fabricをブロックチェーン対応のものとして使用します。

オープンソースのIPFSは、このソリューション用にカスタマイズされ、ドキュメントの取得プロセスを変更します。基本的には、まずブロックチェーンネットワークをチェックして、リクエスタがドキュメントを読むために必要なパーミッションを持っているかどうかを確認し、要求は対応するIPFSノードによって実行されます。「知る必要がある」 場合にのみ、意図した相手とファイルを安全に共有できます。このようにして、主にセキュリティおよびプライバシー関連の問題を解決します。

これらの製品レベルのソリューションを包括することで、NTTデータグループは、今日のグローバル・サプライ・チェーンが直面している多くの複雑な課題に対応できることが実証されています。

2.2 メリット:ビジネスおよび技術

上記のソリューションにより、企業はサプライチェーンオペレーションを効率的に管理・最適化しながら、大きなコストメリットを得ることができます。最も重要なビジネス上のメリットは次のとおりです。

サプライチェーン管理におけるブロックチェーンのほとんどのPoCと初期生産グレードの製品は、3つの主な利点を提供することに焦点を当てています。

  1. 1.迅速な管理とガバナンスの運用:ほぼリアルタイムの情報共有により、関係者はさまざまな運用とプロセスを迅速化できます。その結果、コスト削減という点で大きな金銭的メリットが得られます。
  2. 2.ビジネスプロセスの効率性の向上:複数の関係者にまたがるビジネスプロセスは、関連するすべての情報に即座にアクセスできるため、スピードと品質が向上し、全体的な効率性が向上します。
  3. 3.製品や原材料の産地表示などの付加価値の取り組み:企業は、製品のすべての原材料とその原産地データの産地表示、インセンティブ、消費者からの直接的なフィードバックなど、高度な付加価値機能を提供できます。
  4. 4.即時かつ完全で信頼性の高いトレーサビリティ情報の入手:トレーサビリティ情報は、以前のサプライチェーンソリューションによっても入手できましたが、ブロックチェーンベースの全体的なソリューションが情報伝達のスピードと品質を向上させ、信頼性の検証を容易にします。
  5. 5.意思決定の効率性の向上:迅速なワークフローと、完全かつリアルタイムで信頼性の高いサプライチェーン情報を利用できるため、企業は情報に基づいた意思決定を行うことができます。
  6. 6.リコールおよび損傷制御シナリオの効果的な管理:企業はすべての出荷・ボックス・パケットの正確な位置とステータスを追跡できます。汚染された食品や医薬品を回収するといった不要なシナリオを管理し、生命・金銭・ブランド・価値への被害を最小限に抑えるうえで非常に役立ちます。
  7. 7.多くのグローバルスタンダード・ルール・規制へのコンプライアンス:ブロックチェーンベースのサプライチェーンソリューションは、さまざまなステークホルダー間で効果的に情報を共有するため、多くのグローバルサプライチェーン規格に準拠するように設計できます。さらに、個人情報のセキュリティ、品質管理プロセス、商品や製品の標準などに向けて世界中の法律や政府機関によって義務付けられているさまざまな規則や規制に容易に準拠することができます。

2.3 ユースケース

食品や医薬品の安全性などのユースケースを扱う事業領域では、トレーサビリティ情報がすぐに利用可能になることだけでも、すぐにメリットがあります。しかし、より複雑である消費者製品の提供と関連する支払ワークフローの管理も扱うユースケースでは、以下で説明する包括的なソリューションが必要です。

企業はこれまで解説したソリューションを活用して、主要なサプライチェーンオペレーションを強化できます。たとえば、物流会社への支払は、出荷が搬送先に搬送された直後にリリースできます。スマートコントラクトは、商品の検収などの条件が満たされると自動的に資金を放出可能です。

こうした解決策は、今までにないような興味深いシナリオも可能にするでしょう。例えば、東京でおいしいパスタを食べている人が、スペインのオリーブ農家やイタリアのパルメザンチーズの生産者に笑顔と感謝のインセンティブを送ることができる、というように、トレーサビリティソリューションがこのエンドツーエンドの可視性と接続性を提供することになります。

また、COVID-19のパンデミック対策・管理の取り組みのような例外的なシナリオでは、ワクチンの配送と、ワクチン接種を受けた個人のその後の検証可能なオンチェーンのワクチンパスポートを効果的に追跡することができます。

3. 総合的なサプライチェーンソリューションとしてNTTデータグループのソリューションを検討すべき理由とは

私たちの経験では、複雑なサプライチェーンソリューションにおいて対処が必要とされる主な課題は次のとおりです。

  1. 1.サプライチェーンのすべてのエンドポイントにわたる真正な入力データの収集に関する問題
  2. 2.ブロックチェーンソリューションと既存のエンタープライズシステムとのシームレスな統合、および利害関係者間での多様なデータ表現に関連する問題
  3. 3.物理的・金融的サプライチェーンの統合
  4. 4.ブロックチェーン上で共有される重要なビジネスデータのプライバシーの維持

NTTデータグループでは、BlockTrace, Fresh Food Trace, BlockTrace DMP など、これらの課題の大半に対応する複数のソリューションを既に実装しています。知識、スキル、専門知識を適切に組み合わせることで、お客様のビジネスドメイン向けのブロックチェーンベースの包括的なサプライチェーンソリューションを構築するためのすべての能力を備えています。

まとめ

前編・後編にわたり、サプライチェーンマネジメントの現状の課題とNTTデータグループでブロックチェーンを活用した課題解決のソリューションについて紹介しました。サプライチェーンマネジメントの課題は、国・地域などにより、様々な課題が存在します。本コラムでは、ブロックチェーンを使用した課題解決の可能性についても記載しました。
今後も、NTTデータグループのBlockchain CoEでは、ブロックチェーンを活用したサプライチェーンマネジメントの課題解決に向けて、さらなる研究開発を進めてまいります。

  • 「BlockTrace」は日本国内における株式会社NTTデータの登録商標です。
  • 文章中の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。