DXでめざす未来:『サーキュラー・エコノミー』の紹介 - 前編 -

2021.09.14

  

概要

本コラムでは、ヨーロッパを中心に提唱されている社会経済モデル「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」ついて紹介します。 前編の今回はサーキュラー・エコノミーの概念紹介と、サーキュラー・エコノミー実現のためのビジネスモデルとデジタル・トランスフォーメーション(DX)との関係についてお話します。

サーキュラー・エコノミーとは

サーキュラー・エコノミー(CE)の概念を一言でいうと、「資源を新たに採取するのではなく、既存のものを使い回そう」です。

図1: リニア・エコノミー、リサイクル・エコノミー、サーキュラー・エコノミーの紹介

図1: リニア・エコノミー、リサイクル・エコノミー、サーキュラー・エコノミーの紹介

従来の基本的な社会経済スタイルは「リニア・エコノミー(直線型経済)」で、資源を採取し、それで製品を作って使い、要らなくなったら「ごみ」として捨てる、といった資源の流れが一方通行なものでした。また、日本でもこれまで進められてきた3R(リデュース・リユース・リサイクル)の「リサイクル・エコノミー」では、使えるものは再利用して廃棄物を少なくすることを目標にしていますが、「ごみ」が出てしまうことは容認しています。

いっぽう、サーキュラー・エコノミーは、使用済みのものは「ごみ」ではなく「資源」と考え、極力新しい資源を投入せずに、資源を何度も循環させること、廃棄物と汚染を発生させないことを前提としています。

サーキュラー・エコノミー型社会への移行は、脱炭素化や国連が提唱しているSDGs(持続可能な開発目標)の達成に深く貢献します。また、企業としても、資源を輸入に過度に頼る必要がなくなり資源供給の安定化が図れるというメリットがあると考えられます。

デジタル技術でサーキュラー・エコノミーを推進

サーキュラー・エコノミーを実現するには、従来のリニア・エコノミーやその部分改良版ともいえるリサイクル・エコノミーとは異なった新しいビジネスモデルを採用する必要があります。また、その新しいビジネスモデルを推進するためにデジタル技術は必須となります。

サーキュラー・エコノミー実現のために参考にすべきビジネスモデルと、その推進のためのデジタル技術の活用例を紹介します(図2)。

2: サーキュラー・エコノミーを実現するためのビジネスモデルとIT技術の活用例

図2: サーキュラー・エコノミーを実現するためのビジネスモデルとIT技術の活用例

サーキュラー・エコノミーを実現するためには、過剰な生産の防止や、製造(Production)の段階から長期利用・リサイクルのことを考えた商品設計が求められます。デジタル技術を活用すれば、たとえば、インターネットでの商品の受発注でオンデマンド生産をしたり、AIで需要予測したり、IoTを利用して製品状態のデータを収集し製品の長寿命化などの製品改良を行ったりといったことができるようになります。
また、たとえば、動画や音楽などのインターネット配信、電子決済、チケットレス、ブロックチェーンによる貨幣・証券の電子化といった方法で、製品そのものを作らず流通させない脱物質化をデジタル技術で実現することもできます。

使用(Use)の段階では、製品のシェアリングや、製品そのものを所有するのではなく「機能」を受け取る「製品のサービス化」などといったビジネスモデルが考えられます。ここでも顧客接点のデジタル化やIoTを利用した製品メンテナンス、AIで需要と供給のマッチングなどを行うことが考えられます。

製品のサービス化にはレンタルやリース契約といった従来のビジネスモデル以外に、「製品の利用量に応じて料金を徴収する」というサブスクリプション形式に近い新しいビジネスモデルも提案されています。これは、利用者は利用量に応じてメンテナンス費用を含めた利用料金をメーカーに支払うというシステムで、タイヤ、照明器具、お掃除ロボット、エアコンなどのメーカーで先例があります。メーカーは利用状況・製品状態をIoTセンサから収集し、修理・メンテナンス・不用品回収までを一手に行います。つまり、利用者は製品を「所有」することなく、その「機能」を利用することができるのです。

IoTで収集したデータは新製品開発時に利用できるのみならず、データを解析して利用者の使用環境に合わせた製品に変更したり、利用者への省エネアドバイスなどを行う別メニューを用意したりと新しいビジネスの創出にもつなげることもできます。

シェアリングやモノのサービス化といったビジネスモデルでは、製品の所有権は企業にあるので、使用済み製品の回収や再利用(Recycling)もスムーズに進みます。製品を消費者が「所有」する場合には、生産者が不用品を回収できるような仕組みづくりを整えることが大切です。また、AIを利用することで、回収・分別業務の効率化を計ることができると考えられます。回収した不用品はリユース品として販売したり、整備して新製品として販売したり、二次原料・副産物を回収して再利用したりして、廃棄物を排出することを防ぎます。

サーキュラー・エコノミー実現のためには、国、地域、業種を超えた複数企業の連携が必要となってきます。そのためにも、IoT、AI、ブロックチェーンなどのデジタルの活用は必須です。

このように、デジタル・トランスフォーメーション(DX)によるビジネスモデルの変革は、サーキュラー・エコノミー実現のための最も重要なキーポイントのひとつとなります。

前編まとめ

前編ではサーキュラー・エコノミーの紹介と、DXがサーキュラー・エコノミー実現のために重要であることを述べました。後編では、サーキュラー・エコノミーに転換すべき理由と、各組織でサーキュラー・エコノミーとDXに取り組む際のポイントについてお話します。

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