DXでめざす未来:『サーキュラー・エコノミー』の紹介 - 後編 -

2021.09.21

概要

本コラムでは、社会経済モデル「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」について紹介します。
後編の今回は、サーキュラー・エコノミーに転換すべき理由と、各組織でサーキュラー・エコノミーとデジタル・トランスフォーメーション(DX)に取り組む際のポイントについてお話します。

サーキュラー・エコノミーに転換すべき理由

サーキュラー・エコノミーに転換すべき理由として、まず、将来的な環境・社会状況の変化が挙げられます。将来、資源不足により原材料価格が上昇し、従来のリニア・エコノミーのままでは製品価格が上昇、さらには製品そのものを製造できなくなるでしょう。つまり、大量生産・低価格のビジネスモデルでは競争上の優位性を保ちつづけることはとても困難になると予想されます。
いっぽう、サーキュラー・エコノミーは環境問題・社会課題の解決と経済成長を両立させる経済システムであると考えられています。マッキンゼーの推定によると、サーキュラー・エコノミーへの移行により、2030年までにヨーロッパで1.8兆ユーロの純経済効果を生むとされています [1]

つぎに、機関投資家などによる環境配慮要請が高まっていることもサーキュラー・エコノミーへの転換の動機付けとして挙げられます。企業における環境や社会に配慮した中長期的な取り組みを評価するESG投資は世界で主流の投資方法になってきており、日本国内でも年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの大規模機関がESG投資を始めています。欧米の大手金融企業ではサーキュラー・エコノミーへ取り組む企業を選定した投資信託商品も販売されています。
また、国際的な機関投資家団体IIGCCは「新型コロナウイルスによるパンデミックからの経済復興がグリーン・リカバリー(気候変動の緩和と環境再生を実現する経済復興)であること」を求める声明を世界各国の指導者に送っています。このように、今後サーキュラー・エコノミーは国際的な主流になっていくと予想されます。

さらに、日本国内でもサーキュラー・エコノミーへの転換推進が始まってきました。2021年1月に環境省と経団連が官民連携でサーキュラー・エコノミーを推進することを目的として、「循環経済パートナーシップ (J4CE)」を立ち上げており、2021年7月末時点で109社、13団体が参加しています。今後、国際的な潮流も踏まえて国内でもサーキュラー・エコノミー推進活動が活発になっていくでしょう。

図1: サーキュラー・エコノミーに転換すべき理由

図1: サーキュラー・エコノミーに転換すべき理由

サーキュラー・エコノミーとDXの進め方

前編で紹介したように、サーキュラー・エコノミー(CE)の実現のためには、DXによるビジネスモデル変革・組織変革が必要です。そのためには、経営層がCE・DXを「事業利益をもたらすための経営戦略」と考えて主体的にコミットし、経営方針・戦略の中にCE・DXを取り込む必要があります。ここでは、各組織におけるCEとDXの進め方の一例を示します。

まず、このコラムの前編で紹介したCEを実現するビジネスモデルのうち、どのビジネスモデルを自社の事業に適用できるか検討し選択します。その際に、CE・DXの視点で自社の全事業の強み・弱みを洗い出して整理し、必要ならば組織の再編成や他社との連携を検討します。まずは単一のビジネスモデルで実践してCE型ビジネスの基盤を固め、事業のスケールアップを図る際に適宜他のビジネスモデルを採用していく方がよいでしょう。
つぎに、選択したビジネスモデルを実現するための全社的なCE・DX化戦略を設定し、各事業部門の目標・ビジョンに落とし込みます。各事業部門CE・DX化の進捗具合を見える化するために、KPIを設定したり、目標に対する達成度合いを評価するマネジメント手法OKR(Objectives and Key Result)を利用したりするのがよいでしょう。そして、定期的に達成度合いを評価し、経営・事業戦略を見直し、目標の再設定を行います。

たとえば図 2に示すようなCE・DXビジネスをサポートする全社組織を設置し、ここで経営方針・戦略を練って、経営層と各事業部門間が綿密に連携しながらCE・DX化を推進していくのが理想的です。この全社組織では、トップダウン式に戦略を各事業部門に展開するだけではなく、各事業部門からのニーズやイノベーションを吸い上げて経営方針・戦略に組み込むボトムアップを推進する役割、各事業部間をつなぐハブとしての役割も期待されます。

図2: CE・DXのビジネス化を推進するための組織構造例

図2: CE・DXのビジネス化を推進するための組織構造例

このように、企業がCE・DXを推進するには、経営アプローチの段階から取り組み、組織横断的な変革が必要となります。業務そのもの、組織、プロセス、企業文化・風土の変革が求められるのです。

まとめ

ヨーロッパを中心に提唱・推進されている社会経済モデル「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」について紹介しました。サーキュラー・エコノミーの実現のためには、DXによるビジネスモデル変革・組織変革が必要です。NTTデータ先端技術株式会社は、DXコンサルティングを行うAltemistaテクノロジーコンサルティング室を設立しました [2]。先端的な技術ノウハウを保有する技術者とともに、企業のサーキュラー・エコノミー型ビジネスモデルへの転換、DX化を推進します。

参考

  • 文章中の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

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